そもそも外国籍・要日本語支援の児童生徒について担当している部署が、市町の職員でも認識があいまいだ。
学校関係はたいてい「学校教育課」や「子ども育成課」のような課が対応するのだが、外国籍や日本語支援が絡んでくると「地域自治課」や「多文化共生課」のような課が一部担当していることもある。受付で案内された部署ではなく、別の部署へ回されるということが複数の市町であった。
また、「外国籍と要日本語支援を同一」と判断していたり、担当を完全に分けて互いのことを把握していないことも。はなはだしい場合には、一つの質問をふたつの部署に聞いて、こちらから「あちらはこう言っていました」と繋がないと、まとまらないことまで。
ひとつの市町の中ですら包括して扱われない課題に、はたして、県や市町が共同で取り組むことができるのだろうか――。
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講座第2回目からは、富士にほんごの会の冨田貴子さんが具体的な初期の日本語支援の方法を講義した。
日本へ来てすぐに必要なフレーズ「サバイバル日本語」を教える。どんな子供の情報をわかっていたらいいか、どうやって文字を教えるかなどをグループで話し合ったり、教材を作ったり使ったりしながら、実際の支援に備えた。
参加者の多くがすでに支援員として地域の学校で指導し、日本語学校や教室で教えていた関係者・経験者であることもあり、休憩時間や講座終了後には、盛んに情報交換や議論を交わす姿が見られた。
支援員として活動している受講者に、学校での支援の現状を聞いてみた。
20年以上支援を続けているという受講者は、「支援員の入り方も求められる指導も学校によってまったく違う。だいたいは丸投げで、学習進度や何が必要かをわかっていない担任や校長もいる。職員室に入っても、先生たちも私のことを知らない」と現場の無関心や連携の薄さを嘆いた。
学校によっては、学校予算から教材を買ってくれたり、校長のポケットマネーで出したりということもある。その一方、教材一式支援員個人のもので、学校には置く場所すらないことも。「子供によって日本語支援が必要なくなるまで半年から1年半かかるが、学年が変わればリセット(仕切りなおし)となり、継続した支援ができない」と憤る。
今回の講座は初期の日本語支援に絞られていたが、日常会話が身についても学習言語として日本語を身に着けるには5―7年要すると言われており、その対応も放置してはおけない。だがある市では、支援員は「日本語支援」に限り「教科支援」までは入ってはいけないというきまりもあるなど、理解には遠い現状だ。
沼津会場は3会場中最初に全講座が終了した。一人ひとりに「外国人子ども支援員」のカードが手渡され、笑顔で記念撮影をする参加者の姿もあった。
講師の冨田さんは、「東部はこれまで支援の形がはっきりしておらず個人がどうにか対応してきたが、何人かが集まれば知恵も支援も大きくなる。これから皆さんが出会う子供たちに『今このとき』に必要な支援を的確にしてあげたら未来が変わります」と激励した。
また、県地域外交課の村川さんは、「各市町の予算や考え方の差はあるが、体制を整えて長期的な視点でどう支援できるか考えていきたい。できれば支援員のステップアップ講座なども開講したい」と同県の意欲を伝えた。(静岡県発=秋山郁美通信員)
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