ブラジルのミシェル・テメル大統領が現職として11年ぶりの訪日に旅立った。18~20日という滞在日程の詳細は直前まで明らかにならないが、天皇陛下とのご会見や首脳会談が組まれている。ブラジル側は日本に経済投資を期待するものとみられ、日本側も日伯賢人会議の成果を元に議論すると思われる。訪日決定を受け14日午前、中前隆博在サンパウロ総領事がブラジル邦字紙に対し概要を説明した。
南米諸国や国際会議開催国以外の国で、大統領が二国間協議を主な訪問するのはこれが初めて。14日時点で西森ルイス下議はすでに訪日した。サンパウロ州観光サービス商業連盟(FecomercioSP)の使節団と共に元々この時期に訪日する予定だった飯星ヴァウテル下議(補欠、来年1月から繰り上げ)も大統領の日程の一部に同行する予定といわれる。
中前総領事は、日程や随行員は調整中で18日の直前まで公式発表はないという。インドでのBRICs首脳会議を経て現地入りするが、就任2カ月での早期訪日とあって「日本を重視したいというサインと受け止めている」との感触を持つ。
具体的な議題は、昨年末に予定された訪日中止時点の案件が土台となる。最も重視されるのは、ブラジル現地紙での報道にもあるように「経済投資」と見られる。
両国の企業家や識者からなる06年設立の日伯賢人会議が今月3日、第6回会合を行ない、その成果が議題に上げられる。金銭や政府開発援助(ODA)による支援は実現しない見通しで、技術協力によって支援できる分野を模索する。独立行政法人日本貿易保険(NEXI)による、投資リスク軽減を取りまとめる可能性もある。
また、14年にブラジルを訪問した安倍晋三首相が掲げた「戦略的パートナーシップ」を受けた2年間の総括や、今後の連携関係も確認する。当時議題だった人的交流や査証、医療に加え、安全保障といった分野にも触れる。
リオ―東京五輪を通じたスポーツ交流への契機ととらえ、運営、実務面も含めた関係を構築する。中前総領事は個人的な期待として、日系人に関わる人的なつながりの深化に期待を寄せた。
14日朝のCBNラジオで政治評論家のケネディ・アレンカール氏は「ジウマが2回キャンセルした日本へ真っ先に行くことで、前政権とのスタンスの違いを見せたいのでは」とコメントしていた。また現地紙にはマルセラ夫人が同伴することも報道され、「今までとは違う」との姿勢を見せたい思惑が伺える。
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当地大統領の訪日が実現すれば、2度の中止がありながら要請し続けた日本側にとっても、うれしい成果と言えそうだ。今月上旬に離任した梅田邦夫大使は、政権交代による人事で「大統領府の雰囲気がより外交的になった」と周囲に漏らしていたそう。元駐日大使のマルコス・ガルボン氏が外務次官を務めるなど、今回の訪日には側面的な追い風もあったかもしれない。