移民110周年は地方日系団体にとってだけでなく、サンパウロ市にとっても重要な機会だ。中でも県連には今も「日本文化を残そう」「日本との強い絆を」という強い意気込みがある。そのシンボルが、地元主催としては世界最大規模の日本をテーマにした大イベント「県連日本祭り」だ▼欧米で行われるマンガ・アニメを中心としたイベントには、日本政府の大きな支援が入っていると聞く。まったく残念なことに、ブラジルではわずかなものだ▼これだけ大規模でも、日本のマスコミはほぼこれを報道しない。日本の人にとって「日本をテーマにしたイベント」自体、何も珍しいことではないから―かもしれない。地球の反対側のブラジルで、地元主催で行われているということが、どれだけ凄いことか。その意義が日本の人にはピンとこない▼先日、ある県連幹部と話していた時、「今年の日本祭りの直前に、日本の特派員に集まってもらって記者会見を開いたが、『ただの祭りでは記事にならない』と否定的なコメントばかりだった」と悔しそうにつぶやいた。これが移民や日系人でなく、パリの漫画アニメ中心のイベントのように非日系人主催だったら違っていたのだろうか――という疑問が頭をよぎった▼その県連幹部と話しているうちに、「移民110周年で皇室がご来伯されるのであれば、それに合わせて開催したどうだろうか」というアイデアが出てきた。通常は7月半ばに開催するが、再来年だけ1カ月前倒しするのだ。やることは一緒、ただ1カ月早めるだけ。できるだけ早く、可能なら年内に招待状を宮内庁に送りたい。あの会場を皇室に見ていただくことで、サンパウロの日系団体が総力を結集して行う日本祭りの真価を、ブラジルにも日本にも幅広く再認識してもらう機会にならないか▼今の日系社会が胸を張って、皇室にお見せできるイベントの最たるものは県連日本祭りだ。日系5団体が共催で110周年式典をその特設ステージでやるのもいい。会場には若者やブラジル人も多い。普段、文協に足を運ばない若者にも110周年の意義を植えつけるのに、これほど最適な場所があるだろうか▼2年後は総選挙の年だからブラジル人政治家もおしかけ、伯字メディアも大勢来るに違いない。警備はしっかりしなければならないが、文協内でやるより賑やかで盛大になる。場内各所に特設スクリーンを設置して、より多くが参加しているような形にして110周年式典をしたらどうか▼もしかして、皆さんの県人会の食のブースに皇室がお立ち寄りなるかもしれない。東京五輪2年前であり、日本政府も今まで以上に広報に力を入れるべき時期だし、母県からも五輪の前回開催地のブラジルから観光客をたくさん呼びたいという気持ちが高まっている頃だろう▼地球の反対側で日本文化を広めるために、これだけ手弁当で日系人が頑張っているという事実を、皇室の方なら分かってくださる気がする。皆さんはどう思いますか? もし6月だと学生ボランティアが集めにくいのであれば、逆に式典を、日本祭りに合わせて7月にする柔軟な発想があってもいい▼移民110周年式典を「つつがなく終わらせる」だけではなく、それを地方日系団体の再活性化に活かし、日本祭りを広く再認識してもらうための機会にしたらどうか。そうするならば、今から準備を始めないといけない。1年8カ月後はけっして「遠い先」ではない。来年6月には決まっている必要があるからだ。「移民150周年」という来るべき大きな節目が盛大に祝えるかどうかは、今現在のそんな取り組みの積み重ねにかかっている。(終わり、深)