ブラジル連邦検察庁(MPF)は20日、昨年11月5日にミナス州マリアナ市で起き、19人の死者を出したサマルコ社のダム決壊事故で、サマルコ社幹部と、同社の親会社Vale社とBHPビリントン社から出向の取締役ら21人と企業4社を、未必の故意による殺人罪で告発したと21日付現地紙が報じた。
起訴された取締役の中には6人の外国人も含まれている。国籍は、英国と南ア、豪州、仏国が各1人、米国が2人で、全員、ブラジル内に住所を持っている。
起訴状は、事故現場のマリアナ市を管轄する在ポンテ・ノーヴァ市連邦裁判所に提出された。起訴が受理されれば、同件は陪審員制で裁かれる。
告発されたサマルコ社の幹部は、リカルド・ヴェスコヴィ元社長、元インフラ・オペレーション担当理事でNo.2だったクレーベル・テーラ、構造計画部長ジェルマーノ・ロペス氏ら計5人だ。
サマルコ社にエンジニアリングサービスを提供していたVogBR社と、同社職員サムエル・ロウリス氏も、ダム強度検査で虚偽の結果を提出したとして告発されている。
特別捜査チームを結成し、計21人を殺人容疑で告発するに至ったMPFの捜査結果は、連邦警察、ミナス州検察局、同市警と結論を一にする。
問題のダムは2008年の運用開始時から、泥水が漏れ出るという問題を抱えていた。水圧を分散させるためにダムを側面に拡大する工事が、決壊の原因になったというものだ。
捜査チームを指揮したジョゼ・サンパイオ検事は、サマルコ社がダム崩壊の危険性を認識していたが、安全性よりも利潤追求を優先したために事故が起こったとしている。
事故の被害者達は、殺人罪での実刑判決には期待していない。被害者会のモニカ・ドス・サントスさん(31)は、「S社はとても巨大だし、罪を逃れるためには何でもする」と語っている。
殺人容疑の告発を受けた3社は各々、「事故発生前にそれを知る術は全くなかった」(サマルコ社)、「ダム運営には全く関与していない」(Vale社)、「自社、また社員に出された告発に強く反駁し、弁護を行う」(BHP社)との声明を発表し、争う構えを見せている。なお、VogBR社は何の声明も出していない。