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母県に感謝込め留学50年を祝う=宮崎県人会が副知事ら迎え=技術研修35年、農業も20年に

揃って記念撮影に収まる関係者。相互に留学50年を祝った

揃って記念撮影に収まる関係者。相互に留学50年を祝った

 ブラジル宮崎県人会が23日、県費留学制度の開始50年を記念した式典をサンパウロ市内で開催した。技術研修は昨年35周年を迎え、農業研修はちょうど20年が経過する節目に、母県からも稲用博美副知事ら8人の慶祝団が訪れ、元留学生らとの再会に華やいだ。

 実行委員長の国府修一ジョナスさんが「多大な貢献に感謝。母県で大きな経験を積んだ。今後も継続を願う」と開会を宣言し、高橋久子会長も代表者あいさつで謝意を示した。

乾杯の音頭をとる稲用副知事

乾杯の音頭をとる稲用副知事

 河野俊嗣知事や星原透県議会議長から祝辞が寄せられ、中前隆博在聖総領事や羽藤ジョージサンパウロ州議も登壇し半世紀の節目を祝福した。相互に記念品も交換し、当地からは著名芸術家の版画作品が、母県からは飫肥杉による木製の感謝プレートが贈られた。

 留学、技術研修、農業研修それぞれの帰伯代表者が県に感謝を伝え閉会。最後は揃って記念撮影に収まった。祝賀昼食会では稲用副知事が、「制度は50年、100年と続けて生きたい」と継続要請に力強く応え乾杯し、大きな拍手が沸いた。
 ボサノバの生演奏や余興のカラオケなどを楽しみつつ、OB・OG同士だけでなく来伯団との再会を喜ぶ場面もあちこちで見られ、200人弱の出席者が相互の絆を確認した。


帰国して活躍する子弟たち=母県での経験、活力が源に

代表諸事に立つ甲藤さん

代表諸事に立つ甲藤さん

 帰伯した若者はそれぞれの分野で活躍の場を見出している。甲藤幸パトリシアさん(31、三世)は、08年に産業経営大学へ留学し経営学を学んだ。知識を身につけたことで、日本からの進出企業就職につながったようだ。
 「留学がなければ日系企業の就職はなかった」と感謝し、訪日して学んだマーケティングを生かし、化学製品のセールス業務に日々励んでいる。

黒田さん

黒田さん

 黒木悟さん(54、二世)は技術研修第1回生という古株だ。県の総合農業試験場で花卉栽培の見識を深めた。家業で電照菊を扱っていたため基礎知識は備えていたが、「一農家では試験栽培を積極的にできない」ことから、「品種改良を学ぶ貴重な機会だった」と振り返った。
 効率の良い栽培、また生育期間の短縮など実験によって色んな技術を吸収したが、得たものは知識だけでないという。「『帰国してからやってやるぞ』というやる気が生まれた。刺激を得たことが一番の財産だと思う」と強調した。現在は経営にやりがいを見出し、郊外で生花店を営んでいる。

土田さん

土田さん

 2010年12月から90日間の農業研修で訪県した土田オスカルさん(32、三世)は、稲作や果樹栽培、養鶏など様々な分野を見て回った。中でも「日本は経営管理がピカ一。売り上げの分析で利益を上げる術を得た」と話し、地元のサンパウロ州グアラレマでバラやランの生産をしながら卸売り業に役立てている。
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 宮崎県が66年に始めたブラジル県費留学制度は、今年度を含め計88人が訪県した。また80年に始まった技術研修は86人、96年からの農業研修ではこれまでに40人が研鑽を積んでいる。
 今回の式典は彼らが中心になって企画し、慶祝団のお土産には、全16種目あるリオ五輪記念硬貨を4セット集めた。「学校で交換するなどコイン集めに熱心だった。来訪団も喜んでくれた」と、一世の役員らも頼もしく感じたようだ。


良き理解者としてご支援を=宮崎県知事 河野俊嗣

河野知事

河野知事

 留学や研修制度の経験者が一堂に会し、盛大な式典が催されますことは、本事業を実施する県にとっても大変喜ばしいことです。
 1966年に1名の留学生から始まり、就学機会と交流深化を目的として、移住者子弟88人を受け入れてまいりました。
 技術研修は世界28カ国から213名、内ブラジルからは86名を受け入れております。20周年を迎えた農業青年国際交流受入研修制度では、40名を受け入れました。身に付けた知識や経験を生かし、各分野でご活躍のことと存じます。
 皆様におかれましては、豊かな自然や温かい人情にあふれた宮崎県の良き理解者として、末永く郷土を見守って頂きますようお願い申し上げます。


架け橋となる人材に期待=ブラジル宮崎県人会長 高橋久子

高橋会長

高橋会長

 県費留学の開始から半世紀という長い年月が流れ、200人以上が研鑽を習得しました。これも一重に、宮崎県のご理解ある熱いお心によるものです。祝典には8名が馳せ参じて下さり、厚く御礼を致すと共に、多大なるご厚情に感謝申し上げます。
 留学経験者は日本語が達者になり、自力精神に富んで帰国します。彼らにはブラジル社会に溶け込んで仕事に執念を持ち、両国の良い部分を生かしてほしいと願っております。
 留学生らがブラジル国発展のため、また良き架け橋として各方面で活躍することを希望してやみません。