一般ドライバーが簡単にタクシー運転手として営業できる上、利用者にとってもスマートフォンで簡単に呼べて、既存のタクシーよりもサービスの質も高く、料金も割安だとされるUber。
そんなUberに関し、ブラジル、サンパウロ市で5日、3人組の男達がUber車を呼び出して強盗を働こうとしたが、運転手は非番を利用してUberドライバーとして働いていた軍警だったため、反撃に遭って全員が死亡する事件が起きた。
事件が起きたのはサンパウロ市東部のシダーデ・リーデルで、この軍警は、Uber規定の「運転手、乗客共にいかなる種類の銃器も車内に持ち込む事はできず、これに違反した運転手、乗客はUberの登録を取り消される」の条項に違反したとして、Uber運転手の資格を取り消された。
軍警は5日の午後、女性利用客からの利用依頼を受けた。指定場所に着くと、3人の男が現れ、自分達は呼び出した女性の友人と自己紹介した上で、目的地を指定。その途中、彼女の家の前で止まって欲しいと頼んだ。
そこで運転手が家の前で停車したところ、3人の内の1人が車から降りた後に運転手側の扉を開け、首筋に銃をつきつけて、強盗だと告げた。
運転手(本職は軍警)は車内に所持していた銃で反撃し、3人に向かって発砲した。3人は負傷し、後に死亡した。
このやりとりは全て防犯カメラに映っており、サンパウロ州保安局は運転手の行いを正当防衛だったとしている。
しかしこれに異論を唱えるのは、サンパウロ州人権保護委員会員の弁護士アリエル・デ・カストロ氏だ。同氏は「映像からは、正当防衛と呼ぶには過剰な行為が認められる。1人は撃たれた後に地面に倒れ、武器を取り上げられた時も特別な抵抗をしなかったのに、頭を踏みつけられたし、最初に強盗を名乗った男は被弾して逃走したのに、後を追いかけられた。こうした行為は正当防衛ではなく、過剰防衛だ」と語っている。
法務省国家保安局元局長のジョゼ・ダ・シルヴァ軍警大佐(予備役)はこの見方に反発し、「事件発生の瞬間は非常に切迫しており、軍警は自己防衛のため、一刻を争う状況だった。相手に致命傷を負わせないように配慮して撃つべき部位を探していたら、その間に殺される可能性があるのが現実だ。警察は脅威を取り除くために迅速な行動を取るようにと訓練されている」と語った。
同大佐は、逃げた男を追いかけたのが現行犯逮捕のためだったのなら正当な行為だし、その男が抵抗したために再度撃った可能性もあるから、厳密な調査が必要だが、倒れていた男の頭を踏みつけた行為は、興奮状態の中で起こったと理解できるものの、不適切との見解も明らかにした。(7日付G1サイトより)