現地時間の8日に行われているアメリカの大統領選には世界も注視しているが、当選者がヒラリー・クリントン氏(民主党)になるかドナルド・トランプ氏(共和党)になるかで、ブラジルにどんな影響か出るか、8日付G1サイトなどが報じている。
G1サイトの取材に応じたエコノミストたちの見解では、ブラジルにとって当選した方が良い候補はヒラリー氏だという。
それは、ヒラリー氏が現オバマ政権の継承者であり、現状と大きく異なるような市場変動が起こりえないためだ。そのため、同国の中銀にあたる連邦準備制度(FRS)による経済基本金利の引き上げは徐々に行われ、為替相場も正常化に向かうと見られている。
とりわけ、ジウマ政権での経済崩壊後、回復を目指している最中のブラジルやテメル政権には、現在の為替や利子の基準が変わらないまま建て直しが進められるのが最良だ。コンサルタント企業テンデンシア・コンスウトリアで政策分析を担当するラファエル・コルテス氏も「短期的に見れば、断然ヒラリー氏の方が良い」としている。
ブラジルはジウマ前大統領の罷免後、ジョー・バイデン副大統領から「(ジウマ氏が主張していたような)クーデターではなかった」との公式見解ももらっており、民主党政権との関係は良好な状態を保っている。
ただ、コルテス氏は、ヒラリー氏に関しても中長期的には不確定要素があり、アメリカ政府による経済介入や増税といった状況が生じて経済指標が悪化する可能性があることも指摘している。
一方、トランプ氏が大統領になった場合は経済政策などがより不透明なため、経済市場が国際的に混乱し、為替相場も大変動が起こる可能性があるため、ブラジルの経済復興には大きな足かせになるだろうと、エコノミストたちは予想している。
そのことは11月3日にFBIがヒラリー氏の国務長官時代に個人アカウントでやりとりしていたメールに関する調査を行うと発表し、トランプ氏の支持率が一部の世論調査でヒラリー氏を抜いた際、15%のドル高レアル安が進み、1ドル=3・23レアルになったことでも明らかだ。ヒラリー氏が巻き返し、当選確率が70~90%と報じられた7日の相場は、1ドル=3・20レアルに戻っている。
また、ブラジルの経済紙ヴァロール紙でも、もしトランプ氏が大統領になれば、1ドルは3・40~3・50レアルまで上がるだろうと見ている。
市場では同氏が当選した場合はFRSの利子引き上げ幅が引き上げられる可能性があると見ているが、その場合は景気回復にも悪影響が生じる可能性があると指摘している、トランプ氏は保護貿易を行うことが確実視されており、これらがブラジルの経済復興の足かせになると見られている。
トランプ氏は数百万人の不法滞在移民を撤去させる意向で、これもフロリダ州中心にアメリカ移民が増えているブラジルには気になる話だ。