ブラジリア時間の9日早朝、米国大統領選でトランプ氏当選が決まった時、投票日もヒラリー氏優勢と報じた世論調査との差を感じた人は多かっただろう▼米国大統領選では、有権者票獲得比率と選挙人票の獲得数は必ずしも一致せず、世論調査で優位=選挙で勝つではない。有権者票獲得数はヒラリー氏の方が多いが、トランプ氏は選挙人票で過半数を得、当選した。そういう意味で「選挙は水物」で、世論調査は傾向を示すに過ぎないし、事前調査で優位と伝えられて安堵し、破れる例や、調査結果を見て戦略を変えて勝つ例もある▼8日夜、知人が送って来た「下町ロケット」というビデオにも数字のマジックがあった。町工場が持つ特許を巡り、大手企業が特許侵害と訴えて工場を乗っ取ろうとするが、町工場が勝利するという筋書きだ。途中、町工場側弁護士が「あの裁判官の裁判では大手が21件中18件で勝訴しており、大手を優遇するようだ」と話す場面があったが、この見解は裁判中に変わり、工場長が証言を求められた時も感じたまま話すよう勧めた。更に公判後、「数字だけ見れば大手優遇に見えるが、実際は公平だとの確信を得た」と明かすのだ▼世論調査などでは無作為に選んでいても調査対象に偏りは出るし、数字には表れない要素がある事も否めない。メディア報道にも記者のフィルターが反映される。ブラジルの地方選後、欠席、白票などの増加は政治不信や現状への不満表明との見方も示された。数字などの陰に隠れた真の姿や要求を見極めるのは容易ではないが、為政者などが数字やその陰に隠れた要求などの意味を汲み、正しい判断が出来るよう、再度願わされた。(み)