9日、アメリカの大統領選挙で敗れた民主党代表のヒラリー・クリントン氏が敗北宣言を行ったが、それを聞いて、ジウマ前大統領がツイッターで声明を出した。だが、その声明は、表向きにはヒラリー氏を称えているのに、その実は自身の罷免を皮肉るものだった。
ヒラリー氏とジウマ氏は、ヒラリー氏が国務長官時代の2012年にブラジルを訪れた際、直接面会して話題となった。この当時のジウマ氏は女性大統領として、アメリカのタイム誌などで「世界で最も影響力のある女性」の上位にランクインしていた時代で、ヒラリー氏もジウマ氏のことを賞賛していた。
9日のヒラリー氏のスピーチは、開票前は圧勝とも言われていたところからの意外な敗北ではあったものの、当選したドナルド・トランプ氏への遺恨などは感じさせないもので、支持してくれた、とりわけ女性たちにとって、同国でまだ生まれていない女性大統領への可能性を捨てないように訴えたものだった。
これを聞いたジウマ前大統領は、自身のツイッターでヒラリー氏のことを賞賛した。ただ、その理由は、実にジウマ氏らしいものだった。
ジウマ氏いわく、ヒラリー氏は「国民の直接選挙で、敗者が勝者の勝ちを認めた」のであり、さらに「クーデターを企てようとしなかったから」立派なのだとした。
この発言は、ジウマ氏が16年8月に罷免処分を受ける前から一貫して言い続けていることだ。
ジウマ氏に対する罷免請求は、14年10月に2期目の当選を果たしたときから既にはじまっている。このときは決選投票でアエシオ・ネーヴェス氏に僅差で勝って当選を果たしたが、「これは本当に正しい得票数なのか」とアエシオ氏がずっと疑っていたためだ。アエシオ氏がこう疑った背景には、アエシオ氏の選挙用パンフレットが、ジウマ政権下の郵便局でなぜか輸送されなかったことなどや、ジウマ氏が選挙放送で、アエシオ氏と3位のマリーナ・シウヴァ氏に対し、名誉毀損で訴えられかねない誹謗や中傷行為を行ったことなどがある。
その結果、ジウマ氏は2015年の間中、アエシオ氏から大統領の当選無効を訴えられたが、ジウマ氏はそのたびに、「選挙に勝った人の当選を認めないのはゴウピ(クーデター)だ」と、同じ言い回しで何度も応対し続けた。
その後は、連邦警察のラヴァ・ジャット作戦でジウマ氏の所属の労働者党(PT)の不正が次々と発覚し、ジウマ氏の支持率も2桁台を割り、さらに第1期政権での粉飾会計が有罪になった。これらの理由で、15年の後半までには数多くの罷免嘆願が行われたが、ジウマ氏は引責することもなく、「ゴウピ」を繰り返していた。
結局、15年12月、かねてからジウマ氏とは犬猿の仲だったエドゥルド・クーニャ(当時)下院議長がジウマ氏の罷免請求を正式に受理して罷免手続きを開始。さらに、16年3月、ジウマ氏が贈賄容疑で逮捕直前だったルーラ前大統領の逮捕回避のために官房長官に就任させようとしたため、国民の間でも罷免を求める声が強まった。さらに連立政党の民主運動党(PMDB)との約束をジウマ氏が反故にしたことでテメル副大統領(当時)が立腹し、同党を連立から離脱させた上で罷免に加担させたことで、罷免手続きが具体的に進んでいった。
ジウマ氏は下院や上院での罷免審議中も、「国民の投票で選ばれた人を陥れるのはゴウピだ」と言い続けたが、その頃には、同氏やPTに対する国民の支持は大きく失われていた。
罷免から3カ月、ジウマ氏は依然、同じ論調を繰り返している。(9日付UOLサイト、エスタード紙サイトなどより)
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