キリンホールディングスが2015年に上場以来初となる560億円の最終赤字を出した際、最大原因となったブラジルキリンの工場を、ブラジル資本のペトロポリス社幹部が視察したと18日付エスタード紙が報じた。
キリンは2011年に60億レアル(約3千億円)を投じてブラジル大手のスキンカリオルを買収。ブラジルキリンはブラジル国内でのシェア2位の企業となったが、現在のシェアは25%縮小し、Ambev(66%)、ペトロポリス(14%)、ハイネケン(9%)に次ぐ8・4%のみだ。
業績不振に喘ぐブラジルキリンは9月から、他の大手3社と事業再建に向けた協議を始めた。提携先や内容は年内にも決まる見込みだが、そんな中、ペトロポリス社幹部が3工場を視察した。
視察したのは、バイア州のアラゴイーニャス、サンパウロ州のイトゥー、リオ・グランデ・ド・スル州のイグレジーニャの3工場だ。ペトロポリス社の選択肢は、ブラジルキリンとの事業提携と工場買収の二つだが、具体的な交渉はまだまとまっていないという。
ペトロポリス社はItaipava銘柄のビールの販売網拡大を願っており、アラゴイーニャス工場は一部州都では同銘柄が20%のシェアを占める北東部での生産強化に、イグレジーニャ工場は同銘柄のシェアが小さい南部での販売増に向けた拠点となりうる。
ブラジルキリンは、ブラジル国内の株式や債券の整理を行い、生産経費を今年だけで2億レアル削減する予定で、第3四半期の販売量はビールが2%、酒類全体では12・4%伸び、年間売上額は1・8%増の37億6千万レアルに達する見込みと発表している。
ブラジルキリンは事業提携やブラジルからの完全撤退の可能性への言及を避けているが、Ambevは今年既に1工場を買収済み。残る12工場の一部を買い取る可能性もあるが、事業提携や買収の規模によっては独占禁止法に問われる可能性が出てくる。ハイネケンも株式取得などを検討中で、ブラジルキリンの今後は予断を許さない。