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ブラジル陸軍=小野田少尉称え伝記出版=〝伝説の日本兵〟に学べ=旧敵国軍人を異例の顕彰

(左から)エドアルド少尉、昌郎さん、ルイス少佐

(左から)エドアルド少尉、昌郎さん、ルイス少佐

 太平洋戦争終結を信じず、フィリピン・ルバング島に30年近く潜伏し闘い続けた〝伝説の日本兵〟小野田寛郎さん(1922―2014年)のポ語伝記『Sem Rendição minha guerra de trinta anos(降伏せず 三十年戦争)』(小野田寛郎著、ジェラルド・アウヴェス・ポルチーニョ・ジュニオール訳)の刊行発表会が17日、サンパウロ市にあるブラジル陸軍南東司令部で行われた。小野田氏らの親族や軍関係者、日系団体関係者ら40人近くが集まり、刊行を祝した。

刊行を祝った関係者ら

刊行を祝った関係者ら


 小野田さんは、1942年に和歌山歩兵隊第61連隊に入隊し、情報員として44年にフィリピンに派遣され、ルバング島に潜伏。帰国した日本兵の証言から存在が発覚するも、祖国不滅を信じて遊撃戦を30年近くに渡り展開し、74年に元上官の任務解除命令を受けて帰還。翌年には親族を頼りにブラジルへ移住し、マット・グロッソ州で牧場を営んでいた。
 本書の刊行は、松田ルイ・ユタカ陸軍少将が、小野田氏の又甥(甥の息子)にあたるエドアルド陸軍少尉と出会ったのを機に、「尊敬する小野田氏の生き方を知ることは、ブラジル軍人にとって良い刺激になる」と後押しし、陸軍図書館から出版することになった。第2次大戦中の枢軸国側軍人に敬意を表し、伝記がブラジル軍部から出版されるのは異例なことだ。
 式典にはマウロ・セザール・ロウレナ・シジ陸軍大将、又甥のエドアルド少尉、リベロ・オノダ・ルイス空軍少佐ら軍関係者のほか、森田聡在サンパウロ領事、コーディネーターの平崎靖之氏らが出席した。
 挨拶に立ったマウロ大将は「日系社会は大変な活躍ぶり。素晴らしいと尊敬している」とした上で、「例え困難な状況に置かれても屈服せず、犠牲を払い、忠実に任務遂行をする姿は陸軍軍人にとっても大いに刺激になる」と刊行を喜んだ。
 軍楽隊による優美な音色が響き渡るなか、エドアルド少尉が一冊一冊にサインし、招待客一人一人と握手を交わした。和やかな雰囲気で式典が終わると、ブラジル独立を描いた巨大な絵画を前に記念撮影し、昼食会で参加者らは懇親を深めた。
 本紙取材に対して甥の小野田昌郎さん(75、和歌山)は、「かつて敵国だった日本国軍人に、敬意を表して軍部から出版されたことは大変光栄。移民たちが苦労を重ねてブラジルに貢献し溶け込んできたからこそでは」と感慨ひとしおといった様子で語った。
 息子のエドアルド少尉(35、二世)も「親族に軍人が多く、国を護る軍に対する敬意を抱いていた」と入隊を振り返り、「今後も与えられた任務を忠実に遂行していきたい」と亡き寛郎さんを彷彿とさせるコメントをのべた。