25日に発表された地理統計院(IBGE)の全国家庭サンプル調査(PNAD)のデータによると、不況が進んだため、2015年のブラジル人の平均収入は減り、2000年代前半から2010年代前半まで続いた購買力拡大のサイクルは完全に終焉を迎えた。
インフレと失業率の増大がブラジル人の平均収入低下の要因となった。ジェトゥリオ・ヴァルガス財団(FGV)によると、320万人のブラジル人は貧困層に転落したはずだという。
インフレ調整後のブラジル人の平均収入は、14年と比べて5・4%低下した。月収の少ない方から10%の層(月収219レアル以下の人達)の平均収入の低下率はさらに大きく、7・8%に達した。
FGV社会政策センター(FGVソーシャル)の定義による貧困層(15年の場合は月収206レアル以下)は19・3%増え、総人口に占める割合も、14年の8・4%から10%に拡大した。
しかしながら貧富の格差を表すジニ係数は若干の改善を示した。この係数は0から1の間で表され、数値が低いほど、その社会の貧富の格差が小さいことを示す。14年のブラジルのジニ係数は0・497だったのが、15年は0・491に低下した。
IBGEのパウロ・デ・カストロ院長は、「ジニ係数の低下も本当に喜べるものではない。全体の収入が低下して起きた格差縮小だからだ」と語っている。
収入低下はいずれのそうでも起きているが、収入の高い層の収入の下げ幅が、低い層のそれよりも大きかった事が、格差の縮小に繋がったためで、「(格差は縮まったが)全員の収入が下がることは誰にとっても思わしいことではない」と、Pnad主任のマリア・ヴィエイラ氏は語る。
FGVソーシャルのマルセロ・ネリ理事は、「2015年はこれまでと逆転現象が起きた」と語る。2004年~14年のブラジル人一人当たりの平均収入は4・6%増大した。
過去に大統領府戦略局長官や応用経済調査院(IPEA)院長も務めたネリ氏は、2015年に政府が最低賃金だけを引き上げて、生活扶助費(ボウサ・ファミリア)を14年半ばから16年6月まで据え置いたことを批判している。
労働者会研究院のソニア・ロッシャ研究員は、ブラジル社会全体の貧困と富の分配問題は、景気後退の長期化で一層深刻になると見ている。
同氏は景気回復にはまだ時間がかかり、以前のように「政府が法定最低賃金を引き上げる事で、一般労働者の賃金も上がり、消費が活性化して経済活動が活発化する」といった、2000年代のようにはいかないだろうとしている。