日本では、半世紀ぶりに11月に積雪を記録しました。気温が下がると筋肉が硬くなるため、痛みが増したり強張りが増したりして、辛さを訴える方が増えます。
私自身の古傷も寒い日にうずいてくるので、保温効果のあるサポーターなどを使って、患部を冷やさないようにしています。
さて、14話では、「姿勢をキープするお腹の使い方」についてご紹介します。腰痛予防に大きな効果があり、運動機能が飛躍的に向上します。
「見ため重視の腹」より、日常生活で威力を発揮する「ホンモノの腹」です。
【6つに割れた腹筋と真っ白な歯】
夏が近づくと6つに割れた腹(6シッパクス)と眩いばかりの白い歯の動画や写真が、TVや雑誌などの広告媒体にのります。経済的に恵まれた国や地域ほど、この傾向が強くなるように思います。
見るからに怪しい広告もたくさんありますが、それでも多くの人は「短期間で痩せる!」といった宣伝文句に、心を奪われてしまうようです。実際、美容産業とダイエット産業は、いつの時代も大衆心理を上手に煽って繁盛しています。
しかしながら、割れた腹も眩い歯も、健康に面ではほとんど役に立ちません。やりすぎると、不自然なだけでなく逆に健康を害してしまうのです。
極端なダイエット法や常軌を逸した美容法の多くは、アメリカの西海岸から発生し、世界中に飛び火していきます。小麦色に焼けた肌とバキッと割れた腹、笑うと光る白い歯は、アメリカ人にとって富と健康のシンボルであり、羨望の的なのでしょう。
個人的には、見た目重視の体づくりは健康を害するケースも多いので、真似して欲しくないと思います。
【使える腹】
これまで多くのトップクラスのアスリートを担当してきました。毎日何百回も腹筋運動をやっているにも関わらず、体幹が弱くてポテンシャルを発揮できないアスリートが何人もいました。
ヘラクレスのような体をしているのに弱い。こういう人は、動作をするための腹筋は強いのですが、姿勢をキープしたり、腰部を保護したりする「インナーコルセット」(腰部を補正する筋肉)が働いていないか弱いのです。
インナーコルセットの働かせ方を知れば、つらい腹筋運動をたくさんやらなくても、体の機能を大きく向上させられます。
【「ヘソ下を凹ます」または「八の字を閉める」】
達磨大使は、下腹とみぞおち、眉間のそれぞれに、下丹田・中丹田・上丹田があると説きました。インナーコルセットのスイッチをオンにして、体幹の強さを著しく向上さえるのは中丹田と下丹田です。
下丹田の働かせ方は、ヘソ下を1センチへこませるだけです。これを「ドローイン」と呼びます。下腹部を少しへこませるか、おしっこを途中で止める意識をしながら、自然に呼吸をすることができれば完成です。
上丹田の働かせ方は、肋骨のハの字を少し閉める意識をするだけで十分です。これは「アブドミナル・レーキング」と呼びますが、驚くほど体幹がブレなくなります。同じく呼吸を止めずに、自然な呼吸を続けられたらOKです。
日頃から、下丹田と中丹田のどちらかを意識すれば、姿勢が崩れにくくなり、副次的効果として、下腹もへこみますので是非お試しください。
【プロフィール】
伊藤和磨(いとうかずま)1976年7月11日生まれ 東京都出身
メ ディカルトレーナー。米国C.H.E.K institute 公認practitioner。2002年に「腰痛改善スタジオMaro’s」を開業。『腰痛はアタマで治す』(集英社)、『アゴを引けば体が変わる』 (光文社)など14冊を出版している。「生涯、腰痛にならない姿勢と体の使い方」を企業や学校などで講演している。