ホーム | ブラジル国内ニュース(アーカイブ) | 《ブラジル政界》 どの口で言う?「汚職反対」=汚職防止法を議員が骨抜きに=最高裁長官、検察当局は猛反発=国民即座に抗議の鍋叩き

《ブラジル政界》 どの口で言う?「汚職反対」=汚職防止法を議員が骨抜きに=最高裁長官、検察当局は猛反発=国民即座に抗議の鍋叩き

下院で弱体化した汚職防止法を、上院で即刻採決することを試みたレナン・カリェイロス上院議長(Marcelo Camargo/Agencia Brasil)

下院で弱体化した汚職防止法を、上院で即刻採決することを試みたレナン・カリェイロス上院議長(Marcelo Camargo/Agencia Brasil)

 ブラジル下院本会議で11月30日未明、午前1時から4時にかけて、汚職防止法の大幅な弱体化といえる、多数の修正条項が次々と可決された事は、大きな反響を巻き起こした。特に「検事や判事にも職権濫用罪を適用できる」「弁護士特権を犯す捜査官や判事は処罰対象とする」といった修正条項は検察や司法からの激しい反発を招いた。

 政界汚職事件の捜査で着実な成果を上げているラヴァ・ジャット作戦特別捜査班は「上院がこのまま承認し、テメル大統領が裁可したら、捜査を取りやめる」と声を挙げた。
 また、カルメン・ルシア最高裁判事も同日、「議会が何をやっても、司法を沈黙させることはできない」との声明を発表した。
 ロドリゴ・ジャノー連邦検察庁長官も出張先の中国で「200万人の国民の支持を得て提出された(本来の姿の)汚職防止法はもはや存在しない。議会は汚職撲滅に向けた動きに〃バックギア〃を入れてしまった」と語った。
 議会側も言われっぱなしではない。ロドリゴ・マイア下院議長は「議員達は外からの批判に屈せず、立法府の独立を守った」と語り、レナン・カリェイロス上院議長は、「汚職防止法は修正される運命だった。あんな代物はファシズム国家でしか通らない」とした。
 レナン議長は、下院で承認されたばかりの修正汚職防止法案を素早く採決すべく、緊急採決動議を出したが、賛成14、反対44で否決された。
 下院本会議で承認された修正条項は11に及ぶ。汚職防止法10項目の内、手付かずでのこったのは、「汚職に対する最小の量刑を、禁錮2年から4年とする」の項目だけだった。「選挙時の二重帳簿を犯罪とする」条項は保たれたが、「二重帳簿で犯罪に問われた政党の活動停止ならびに二重帳簿の責任者の党籍停止」は取り消された。
 そもそも、513人の下院議員の内、6割相当の312人は、一般犯罪、選挙犯罪、会計検査院絡みの犯罪で捜査対象になっているか、裁判で係争中だ。最も大きな反発を生んだ「検事や判事にも職権濫用罪を適用できる」という条項に賛成した301人中、188人は、汚職その他の捜査対象、もしくは被告となって係争中だ。
 民意を無視した議会の行動に対する国民の動きは素早かった。レナン上院議長が汚職防止法を即刻上院採決に持ち込もうと動いていたのとほぼ同時刻、11月30日午後8時から9時には、リオ、サンパウロを中心に、鍋を叩いて抗議する〃パネラッソ〃が発生した。
 11月27日の日曜日に異例の会見を開き「汚職には厳しく対処する」と宣言したテメル大統領にとって、政権運営の正念場が訪れた。