汚職政治への鬱憤を爆発させた約20万人(ブラジル自由運動=MBL発表、軍警発表では1万5千人)の市民が4日、サンパウロ市パウリスタ大通りに参集し、抗議の声を上げた。シャペコエンセ搭乗機墜落事故で国中が悲嘆にくれるなか、連邦議会で先月30日の真夜中に採決された「汚職防止法案」。ラヴァ・ジャット作戦(以下、LJ作戦)を支援する市民活動家が約250万人もの国民の署名を集めて議会に提案した法案を骨抜きにした連邦議会に対する怒りが噴出した格好だ。熱気を帯びた市民でごったがえすなか、街頭デモに参加した日系社会からの声を拾ってみた。
10人近くの親戚と一緒にデモに参加した京野吉男さん(81、二世)は、「これまでとは性質の異なるデモ」と感じたという。街頭の横断幕やプラカードのメッセージは、大統領や政党への抗議ではなく、200人以上の汚職議員がいると目される連邦議会全体に向けられていたからだ。
同法案に賛成を投じた議員名簿の一覧も掲げられ、そのなかには太田慶子下議の名前も。京野さんは「友人であり、期待していたので大変がっかり。日系議員が賛成まわってはダメだ」と切り捨てる。日系議員では高山ヒデカズ下議も賛成、西森ルイス下議だけ反対に投じた。
デモへの参加意義について、「これで目が覚めなければこの国は腐る。命懸けの闘いが必要だ。国の為にやることで、恥ずべきことは何もない」と予備陸軍大佐らしく誇らしげに語った。
ジウマ大統領弾劾の時には、友人5人と一緒に来たという新垣ふじえさん(57、二世)は、「今回の議会の動きには、もの凄い違和感を覚える。根本的に考え方を改めなければダメだ」と一刀両断。その一方で「信頼できる政治家がいない」と嘆いた。デモのなかには、軍事介入を声高に叫ぶ過激論も。「賛成はしないけれど、そう思いたくなる気持ちも分からなくもない」と苛立ちを表した。
家族と一緒に参加した河合英男さん(83、大阪)は、「汚職政治家がLJ作戦から逃れるために法案を骨抜きにした。けしからん!」と憤りを見せる。妻のよしこさん(68、二世)も、「テメル大統領には当初期待していたけど、優柔不断でふらふらしている。腰抜けだ。レナン上院議長はブラジルの毒」と怒り心頭の様子で語り、「全面的にモーロ判事とLJ作戦を支持する」と期待を寄せた。
政治運動にはあまり積極的ではないと見られる日系人だが、今回のデモでは数多く参加していた。河合さんは「日系人は勤勉さや誠実さが染み付いており、信頼されている。政治の世界でももっと活躍を期待したい」と語り、「たとえブラジル籍がなくても子や孫が生きていく国だ。もっと日系人が声を上げなければ」と意気込みを見せた。