11月29日未明、チーム創設以来初の国際大会決勝に進出したブラジル南部のサッカーチーム、シャペコエンセは、決勝の地メデリンにたどり着く前に、搭乗機の墜落事故で多くの選手と監督、首脳陣を失った。
事故の衝撃はブラジル全土と世界を揺るがし、3日に地元スタジアムで行われたチーム合同葬には、国際サッカー連盟会長らも出席した。
未だ深い悲しみにくれる遺族、シャペコー市民だが、事故を免れた首脳陣らはチーム再建への歩みを始めた。
事故直後からスルアメリカーナ杯決勝の対戦相手、コロンビアのアトレティコ・ナシオナルは、「優勝をシャペコエンセに譲りたい」との意向を示していた。南米サッカー連盟もこの申し出をうけ、5日午後にはシャペコエンセを正式に2016年の同杯優勝とする決定を下した。
この決定はチームに多くをもたらす。シャペコエンセは、大会優勝賞金に加え、来年の三つの国際試合に参加する権利を得た。リベルタドーレス杯と、前年のリベルタドーレス杯とスルアメリカーナ杯の勝者同士で争われるレコパ・スルアメリカーナ(相手は奇しくもアトレティコ・ナシオナル)、さらには日本のルヴァン・カップ勝者とスルアメリカーナ杯勝者が争うスルガ銀行杯だ。全ての大会で賞金が出るので、シャペコエンセに財政的な助けとなる。
事故直後からインターネット上では、ロナウジーニョや、リケルメなどの元名選手がシャペコエンセでの無給のプレーを申し出るといった噂が流れたが、現実的な話にはなっていない。
多くのブラジルのチームはシャペコエンセに無料での選手レンタルの提案に賛同する意思を示しており、「シャペコエンセを今後3シーズン、2部降格から免除すべき」との声も上がっている。
4日には元アイスランド代表で、FCバルセロナでもプレー経験のあるグジョンセンがプレーを申し出たほか、6日には国内有力チームを率いて優勝した経験もあるレヴィー・クルピ氏が無償で指揮をとることも申し出た。
今後、同様の申し出が増えることが予想される。しかし、チーム会長代行を務めるイバン・トッゾ氏は、全ての援助に感謝するとしながらも、慎重な姿勢を崩さない。
「我々には我々のメソッド、哲学がある。そこから外れる事はしない。堅実なプランに基づいて、プロ意識と競争力を持ったチームを作っていく。これまでの選手獲得の条件はチームに対する献身性があること、フィールド外でも模範的な人間であることだった。その方針は貫く」と語る。
シャペコエンセは被害を免れた選手との再契約を行い、育成チームから有望な選手を引き上げることで、新チームの土台とする予定だ。
今年のブラジル選手権最終節、アトレチコ・ミネイロ戦は行われない事が決定した。新生シャペコエンセの次の公式戦は、来年1月末に開幕するサンタカタリーナ州選手権だ。(規)
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