来る2017年は、江戸幕府が政権を朝廷に返上した「大政奉還」からちょうど150周年の節目――。
サンパウロ青年図書館とニッケイ新聞は14日、『日本文化(Cultura Japonesa)』の第4巻を刊行した。同書は毎週土曜日に好評連載中の「国際派日本人養成講座」の内容を中心に、日本独自の精神性や文化、歴史を日ポ両語で紹介するもの。今回は来年の節目にちなんで、【明治時代を創り、生きた人々】をテーマに、坂本龍馬や西郷隆盛らの逸話を4編紹介。【日本移民の歴史コーナー】では移民の祖・水野龍を取り上げ、【特別寄稿】では岩手銘酒・南部美人の五代目蔵元久慈浩介氏の書き下ろしエッセイを掲載する。
まず【明治時代を創り、生きた人々】コーナーでは、明治維新を成し遂げた偉人達の足跡から、時代の変革期における生き方のヒントを探る。
「坂本龍馬―海洋立国の夢」では、迫り来る欧米列強に対して海外貿易と海軍建設で自由な繁栄をする国を作ろうとした龍馬の足跡を追う。いがみ合う者同士の手を握らせ、未曾有の国難に立ち向かった龍馬の事跡からは、混迷する現代ブラジルに生きる我々が、学ぶことが多くある。
「山岡鉄舟と西郷隆盛―二人の人間が内戦の危機から日本を救った」では、江戸城攻撃の構えを見せる新政府軍に対して、幕府方の使者、山岡鉄舟が単独薩摩藩邸へ乗り込み、西郷隆盛を相手に、内戦回避のための命がけの説得を行う。山岡の「無私の精神」が西郷と共鳴する様からは、大事を背負う人間に不可欠な心得が伝わってくる。
「西郷隆盛に学んだ庄内藩士たち」では、戊辰戦争で敗れた庄内藩士らが、勝者である西郷隆盛の厚意に打たれ、西郷の思想を語り継いでいる点に注目する。庄内藩士らが書き残した『南州翁遺訓』からは西郷の肉声がまざまざと感じられ、道義を弁えない西欧列強への痛烈な批判や変貌していく明治政府に対する西郷の悲憤が胸に迫ってくる。西郷の遺志に、日系社会に継承されるべき価値があるか、一読して判断して欲しいところだ。
「稲垣鉞子―武家の娘、千年の老樹から若桜」は、武家の娘である稲垣鉞子が、明治31(1898)年に米国へ嫁ぐ場面から始まる。鉞子はその身に培った武家の精神そのままに、異国で暮らし、人々と心を通わせていく。日本の良い所を残しながら移住先へ貢献していくというブラジル移民にも通じる精神の原点が読み取れるのでは無いだろうか。
【日本移民の歴史コーナー】では、移民の祖・水野龍を取り上げる。坂本龍馬と同じ土佐藩で生まれ育ち、海外雄飛の志をブラジル移民事業として現実のものにした。しかし、笠戸丸移民から預かった金を返せなかった一事を持って長年客観的な評価を受けてこなかった不運な先駆者。そんな水野の人生を改めて振り返る。
移民会社を立ち上げる以前の経歴は興味深く、自由民権運動家として大隈重信の爆殺を企て実行したという過激な逸話も紹介されている。読者の水野龍像を一新することだろう。
【特別寄稿】では『南部美人』五代目蔵元の久慈浩介氏が、「1300年続く伝統文化の結晶、それは日本酒」を書き下ろした。8世紀から続く日本酒の伝統と知られざる慣習。東日本大震災という未曾有の苦難を乗り越え、前に進もうと努力を続ける東北の酒蔵の姿。困難な世界進出を応援してくれるブラジル日系人に対する感謝が虚心に語られる。
『日本文化4巻』は太陽堂、フォノマギ竹内書店、高野書店などで40レアルで販売中。
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