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PEC55=上院投票で薄氷の通過=連邦政府はひと喜び=今日にも新経済政策発表=サンパウロ市や首都ブラジリアで大荒れデモも

ブラジリアのデモでのバス焼き討ち(Lula Marques/AGPT)

ブラジリアのデモでのバス焼き討ち(Lula Marques/AGPT)

 13日に上院で憲法改正案「PEC55」の2度目の投票が行われ、同法案が正式に議会を通過した。これで向こう20年は財政支出に上限が設けられることになったが、同法案には国民の60%以上が反対しており、この日の投票結果も決してゆとりのあるものではなかった。同日はサンパウロ市やブラジリアなどで、略奪行為も目立つ過激な反対デモも行われた。14日付伯字紙が報じている。

 上院が財政建て直しに必須とされるPEC55を承認したことで、エンリケ・メイレレス財相やテメル大統領からは安堵と喜びの声が聞かれた。メイレレス氏は15日に新たな経済政策を発表する意向も表明し、「新たな経済政策は財政調整以上の恩恵を経済にもたらす」と語った。
 だが、上院での投票結果は賛成53票、反対16票で、11月29日に行われた前回投票の賛成61、反対14を下回った。PEC承認には最低49票が必要だった。
 この投票結果に関してテメル大統領は、「レナン上院議長が投票時間を早めたので、投票できなかった上議がいたため」と気にかけない姿勢を強調した。
 このPEC55通過を受け、連邦政府は今日15日にも一連の新経済政策を発表する見込みだ。これは来週と2回に分けて発表される見込みで、1回目は新たな負債再分配プログラム(Refis)に関するもので、2回目が公的銀行のFGTS(勤務年限保障基金)の部分開放だ。FGTS開放は、労働者の負債返済と、零細企業への貸付の活性化が目的だ。
 政府の長期展望では、現在は国内総生産(GDP)の17・14%相当の歳入は、経済の回復に伴い、2019年にはGDPの18・38%に達する。歳入は経済成長と共に増え、2036年までは、増税しなくてもGDPの18・38%を維持する見込みだ。その一方で、現在はGDPの19・85%を占める歳出は徐々に割合を下げ、2019年には歳入と同じGDPの18・38%、最終年の2036年にはGDPの12・08%になる見込みだ。なお、10年目の2026年にシステムの見直しを行うことにするという。
 だが、PECの対象に教育部門や保健部門も含まれることに国民の6割以上が反対するなど、PEC55に対する国民の反応は悪かった。13日には7州とブラジリアで抗議デモが行われ、サンパウロ市ではパウリスタ大通りにあるサンパウロ州工業連盟(Fiesp)にデモ隊が侵入を試みる騒ぎとなった。会長のパウロ・スカッフィ氏はテメル氏の親友で、民主運動党(PMDB)所属だ。またブラジリアではバスの焼き討ちが起こった。
 また、この日の投票後、民主党(DEM)上院リーダーで、同党の18年大統領選候補と目されるロナウド・カイアード上議は、テメル大統領が今年中に辞任し、大統領選と連邦議員選を前倒しで行うことを求めた。