第2次大戦中に強制立退を迫られ、連邦政府により接収されていた旧サントス日本人学校―。全面返還を求めた60年越しの返還運動が、今月ようやく実を結んだ。それを祝って10日夜、サントス日本人会(安次富ジョージ会長)は同会館で、記念式典を盛大に行った。長年、返還運動に携わってきた関係者ら120人を越える招待客が参集し、念願の全面返還に歓喜に沸いた。
式典には安次富会長、上新元会長、ジョアン・パウロ・パパ連邦下議、中井貞夫市議、レイナルド・マルティンス元市議、中前隆博在聖総領事らが出席した。
挨拶に立った安次富会長は「本日、ようやく我々は祈願を達成した」と喜び、長きに及んだ返還運動を振り返り、功労者へ感謝を滲ませた。「全面返還は最終章のようだが、我々にとっては次の段階の始まり」として、「さらなる日本語及び文化の普及を通じて、日伯両国の絆を緊密にすることに寄与したい」と意気込みを見せた。
上新さんが会長時代の1994年に伊波興祐元下議が、全面返還を求めて議会に法案を提出したが、憲政委員会で止まって進まなかった。その後も上程待ちが続き、パパ下議らによる緊急案件としての審議働きかけがあり、先月10日に連邦上下院で可決され、テメル大統領が5日に署名、正式に発効した。
移民百周年の年に同市市長を務め、早期審議を働きかけたパパ下議は、「希望を失わず、忍耐強く諦めずに皆が闘ってきた成果だ」と称えた。
同会の初代会長を務めた中井繁次郎さんの孫・中井貞夫議員は「長く険しい道のりだった。日系社会を中心に、総領事館や各方面からの協力を経て、ようやく実現したもの」と喜びを見せた。
その一方で「戦後、サントスに戻った祖父が会を再開した年齢と、いま私は同年代」と思いを馳せ、「副会長として日系社会がますます発展するように努力していきたい」と力を込めた。
乾杯で会場が熱を帯びると、積年の労苦を労い、関係者は親睦を深めた。今年は、連邦令で同会館が接収されてから70年という節目。さらに無償貸与が署名されてから10年という当地日系社会にとっては、記念すべき特別な年となった。
上元会長時代に、会員として返還活動に共に携わってきた青木さんは、「戦時下にどのような迫害を受け、困難を乗り越えてきたか…。返還のことを知らずに眠っている人がたくさんいるはず」と感慨深げに語った。
橋詰巌さん(78、二世)と妻・桂子さん(74、三世)は「大変嬉しいこと。日本文化が盛んになるなかで、地域のブラジル人がどこに行けば日本文化と接することができるかを知ることになる」と語り、今後に期待を覗かせた。