サンパウロ市の中心地だが社会的には最も問題を抱えた地区の一つ、クラコランジアにある、5歳児までの幼児教育に特化したジーノ・ブエノ・プロモーションセンターは、通常の幼稚園になじめない外国人の幼児のオアシスとなっている。
カトリックの修道女会が経営する同センターでは、5年前より、ボリビア人、ハイチ人、ナイジェリア人などの移民の子供の受け入れも開始した。5年前は312人中30人だった移民の子供は、今では90人に達している。
子供たちは終日保育を受けられ、おやつを含めると4回の食事を与えられる。音楽の授業やレクリエーション、スポーツの時間もある。
学費は無料だが、学校の近くに住み、家族の収入が一人当たり月額930レアルを超えない事が条件だ。
社会的に恵まれない家庭の多くは、何とかしてここに子供を入れたいと望んでいる。
15の教室にはそれぞれ、幼児教育の専門で学んだ女性教師と助手が一人ずつついている。
「息子をここに入れるまでは大変だった。言葉が分からないからなじめなくて、他の子供から暴力も受けた。普通の幼稚園は外国人に冷たい。私たちに入園書類についても説明もなく、『国に帰った方が良い』とまで言われた」と、ボリビア人のマリサベル・キスペさんは語る。
ここでは、ポルトガル語の分からない幼児が新しく入ってくると、前からいる子供たちが自然に助けるという。
アンゴラ人の英語教師ミシェル・オニェンディさんは、「ここの多国籍な雰囲気はとてもすばらしい。うちの息子は他の国の文化や言葉も学べるし、とても優しくされていて、私たち家族も喜んでいる」と語る。
10日にはこのセンターで、クリスマスパーティーが開かれ、サンタクロースが子供たちに、おもちゃや衣服、靴や食べ物といったプレゼントを手渡した。
「私はこのセンターにとても感謝している。息子の1人がここに入れることになった時の私は薬物中毒患者で、コカインがキマった状態で息子を連れてきたことも何度かあった。でも、こんな家族のいる子供も分け隔てなく扱ってくれて…」と語るタンザニア人のビンダ・サジさんは、ここ2年ほど薬物は断っているとした。
ビンダさんの子供は4歳で、妊娠中も薬物摂取を続けたために、神経運動遅延症児として生まれた。話すのにも、歩くのにも障がいがある。
「いかなる子供も受け入れることは私達にとっては当たり前のことで、法律で規定される必要さえない。子供は皆、他の子供と同様に、ここで学ぶ権利がある」と、同センターのジャニセ・ソウザ・ボルジェス副センター長は語った。(15日付フォーリャ紙より)