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最高裁=職権乱用法を上院から取上げ=レナン上院議長との牽制合戦続く=下院や最高裁内部からも反発

ルイス・フクス最高裁長官(José Cruz/Agência Brasil)

ルイス・フクス最高裁長官(José Cruz/Agência Brasil)

 14日、連邦最高裁のルイス・フクス判事は、レナン・カリェイロス上院議長(民主運動党・PMDB)が上院で審議を進めようとしていた「汚職防止法」を、下院に差し戻すよう命じた。同法案には、最高裁や検察の権力をも牽制しうる「職権乱用禁止条項」が含まれている。15日付現地紙が報じている。

 14日、レナン議長は上院本会議で職権乱用防止法を可決しようとしたが、各党上議からの反対を受け、投票を断念し、憲政委員会(CCJ)にかけることにした。
 レナン議長は11月30日にも汚職防止法を緊急承認しようとしたが、反対にあって断念。その直後に最高裁のマルコ・アウレーリオ・メロ判事から議長停職命令を受けた。この時は、憲法改正案55号(PEC55)を年内に上院で承認させたかった連邦政府が最高裁と談合し、処分を免れたが、同議長はその後、オデブレヒト社元役員の供述で汚職関与を指摘された上、12日にはロドリゴ・ジャノー連邦検察庁長官からラヴァ・ジャット作戦(LJ)絡みの容疑で起訴されていた。
 レナン議長は13日、判事らも含む公務員の報酬に上限を定めるスーペルサラリオ法を承認させており、職権乱用防止法の投票を強行しようとしたのはその翌日だった。
 一方、フクス判事は、「汚職防止法案は本来、国民の願望から生まれたもので、本会議で直接審議されるべきなのに、議会があまりにも修正を加えすぎた」とし、同法案を下院に差し戻して、再審議するよう命じた。
 汚職防止法案はそもそも、13年のサッカーのコンフェデ杯期に全国で多発したマニフェスタソンを受けて連邦検察庁が作成。200万を超える国民の署名も添えて連邦議会に提出したものだ。
 下院の特別委員会は「同法の正式公布前の選挙時の裏金(二重帳簿)は罪に問わない」という条項も書き加えたが、社会的な反発が大きく、11月29日~30日未明に開催された第2回目の審議で取り除かれた。だがその代わり、判事や検事も懲罰の対象とするという職権乱用防止法改定案が盛り込まれるなど、最終的に11の修正が加えられた。
 フクス判事の命令後、ロドリゴ・マイア下院議長は「司法からの侵害だ」と反論した。ジウマール・メンデス最高裁判事も、「立法府の判断を奪う」という意味で、「これではいっそ議会を閉鎖し、(LJ捜査官の)デウタン・ダラゴノル氏に議会の鍵を預けた方がいいのではないか」と言い、司法や検察が立法府の権力を上回りかねないような状況を危惧した。
 一方、オデブレヒト社元役員のクラウジオ・メロ・フィーリョ氏によるLJの報奨付供述(デラソン・プレミアーダ)で、テメル大統領をはじめとする連邦政府やPMDBは大打撃を受けており、14日には、クラウジオ氏が金の受け取り役をつとめたと名指ししたテメル氏側近のジョゼ・ユネス特別補佐官が辞任した。ユネス氏はLJへの関与を否定している。