援協が運営する自閉症児療育学級PIPA(井上健治代表)が3日、第12回発表会をサンパウロ市の宮城県人会館で行った。
今年、創立10周年を迎えた同施設。薬剤による処置が一般的な当地の医療事情に反し、日常生活を送りながら療法する方針は、先進的な治療として高い評価を受けている。14年からは州政府とも提携を始めた。現在、約40人の自閉症児が通う。
発表会には菊地義治援協会長ほか各日系団体の代表者、中前隆博総領事、ファン・サントス西国大使、ジョアキン・アウグスト・マンゲイラ在聖アンゴラ領事なども訪れた。
リオ五輪をもじって「オリンピッパ」と題した発表会では、トーチを手に同施設を出発した生徒が、次々とそれを受渡し会場まで辿り着く様子が映像化され、トーチを持って生徒が入場するという趣向の凝った演出で幕を開けた。
第1部では、楽器演奏やダンスといった遊戯が披露され、第2部では障害物競走が行われた。教師の補助を受けながらも懸命に取り組む姿に、保護者からは暖かな拍手と大きな声援が送られた。終わりには健常者でも難しい一輪車やローラースケートが披露され、会場が大きく沸いた。
保護者を代表してあいさつした母親は、「どんなセラピーを受けても、ダメで途方に暮れていた。そんな時、義姉の紹介でPIPAに。人生が大きく変わった」と振り返り「今では、旅行でも外食でも、何処へ連れて行っても何の心配もなくなった」と喜ぶ。
「経験を共有し支えてくれた父兄の方、息子に能力を認めて向き合ってくださる先生方、活動を支える援協に感謝の気持ちで一杯です」と語ると、強く共感した保護者たちも目頭を熱くした。
これまでの活動を支えてきた功労者も表彰した。発表会を終え、子どもたちが父母のもとへ向かうと、しっかりと抱擁を交わし、子どもらの確かな成長に喜びの表情を浮かべた。
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第12回目を迎えたPIPAの発表会。オリンピッパといっても、「競争はなく、皆が勝者だ」というコンセプトに基づくもの。自閉症児でも、できることや、できないことは千差万別。先生の補助を受けながらも、自分の力で発表を行おうとする姿に感動が広がり、和嶋リカルド施設長は「人生のなかで障害として存在する小さな石や大きな石を、皆で一緒に取り除いていこう」と呼びかけた。発表会を終えると、参加者全員に金メダルを模したクッキーの首飾りが子供たちから配られ、まさに「皆が勝者」であることを体現するような感動的な発表会となった。