ブラジル保健省が17日、今年1~9月に中絶手術が原因で死亡した妊婦は1215人で、1日4人が死んだ計算になる事を発表したと17日付エスタード紙が報じた。
ブラジルは基本的に中絶を禁じているため、不法なクリニックを利用する、薬を入手して自分で処理するなど、危険な方法で中絶を試み、重大な結果を招く例が多い。
14年の公式統計によれば、中絶が原因で死んだ妊婦は54人で、妊娠中や出産時の死亡例の3・3%だった。この数は妊娠故の血圧上昇や出血、炎症による死者を大幅に下回るが、中絶が禁止されているため、統計に出ない例がある可能性が高い。同年までの統計では中絶による死者は2日に1人程度とされていた。
一方、中絶後の諸問題で入院を要した患者は、10年の20万8770人以降、徐々に減り、15年には19万2824人となった。16年の入院患者数は12万3312人程度と見られているが、その一方で、中絶が原因で死亡する妊婦は、15年1664人、16年も1~9月だけで1215人と急増している。
専門医によると、中絶手術が適切な施設、適切な方法で行われれば、妊婦が死亡する例は10万件につき、0・5件程度で、自然分娩同様、ごくわずかだ。特に、中絶が妊娠10週以内に起きた場合の致死率はほぼゼロだという。
そういう意味では、中絶によって1千人超の犠牲者が出る事態は防げるはずだが、ブラジルでは中絶が基本的に禁じられているためにこれ程多くの犠牲者が出ているという。
妊娠を継続するか否かを決める権利を女性に与える事を擁護する団体では、中絶を自由化すると中絶数が爆発的に増えるとの懸念を否定し、自由化後の数の増加は、違法ではなくなった事で統計上に現れる数が増えるだけだとし、中絶を認める事で、その後も妊娠が可能な状態を保ち、妊婦の命を守る事が出来ると主張している。
ブラジルの場合、正式な認可を得て行われた中絶手術の数は、15年上半期が738件、16年上半期が768件だった。
なお、無用の中絶手術や犠牲者を減らすためには、青年達に対する適切な性教育も不可欠だ。