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ニッケイ俳壇(906)=星野瞳 

アリアンサ         新津 稚鴎

沈み行く月に妻恋鹿の鳴く
横書きの文親しめず秋灯下
生え広がり咲き広がりて秋桜
引力に耐えて暮れゆくパイナかな
除夜告げて我家に古りし鳩時計
咳激げし枕を掴み起き直り

【すぐる秋に百才を得られた作者、いかがお過ごしのことか、アリアンサは遠いので仲々行けない。お詫びする】

プ・プルデンテ       野村いさを

春寒しもう一枚着て行くことに
山椒の無き田楽の味気なし
ちんば曳きおそるおそるで青き踏む
今日も晴屋根替え人夫ものんびりと
曽孫の手向けし風車芝の墓地

ペレイラ・バレット     保田 渡南

人が人亡ぼす兆し原爆忌
仔を連れし豚鳴き寄るや木芋掘る
ウルブーのからみ降るや音高く
めしの噴く音に覚めけりかまど猫
余生とはわびしきものや冬の月

サンパウロ         湯田南山子

リハビリや日本祭に行けぬ悔
職退いてよりの三寒身にこたえ
差し昇る陽に催わされた日向ぼこ
焼藷の焦げしを好む皓歯かな
梅咲くや後藤農園思ひ出す

サンジョゼドスカンポス   大月 春水

何も彼も無くなって行くもの卆寿かな
梅干しにおにぎり珍味と五輪の日
三本の糸のつまびく哀歌かな
気をつけて行けよの一言深き霧
悪からずと云う言葉信じ重ね着す

ソロカバ          住谷ひさお

オリンピック待つと云う不安リオの春
今日よりはオリンピックぞ春来たる
ブラジルも見事入場式春の宵
日の丸へ拍手おくりてリオの春
ビール酌みオリンピックのテレビ観る

サンパウロ         武田 知子

今日も又過去となりゆき春待てり
コクコクとシャンパングラスに春の音
亡夫知る人より知遇あたたかし
重ね衿少し派手目に春着かな
春寒をかこちて居りし昨日今日

サンパウロ         児玉 和代

時余る身にもゆとりや日脚伸ぶ
重ね行く日々を噛みしめ春を待つ
風を受く若き軽装春めきぬ
日射しあるうち帰路急ぐ春寒し
三寒の日曜人居ずバスも来ず

サンパウロ         西山ひろ子

媼作る太ねぎ甘く母の味
滋養にと夫へ頂く寒卵
ありがとう云ひ合ひ家族冬ぬくし
ど忘れを夫婦で笑ひのどかなり
悴みし両手でつつむ湯呑かな

サンパウロ         新井 知里

リオ五輪事故なく無事の春にショー
アリアンサ総出で祝いし移住祭
アリアンサ第二のふるさと移住祭
校庭の昔を偲ぶふるさと移住祭

サンパウロ         竹田 照子

リオ五輪光の祭典冬空に
冬ざれや友無き余命の寂しさよ
悲しみの空想ひ出す原爆忌
リオ五輪聖火しづしづ空に舞ふ
冬深しテロの仕業におののく世

サンパウロ         玉田千代美

寒き夜の子の足音を確かめる
寄せ鍋に父似母似の子等集ひ
ままならぬ足をかこちて冬ごもり
病むことは生きる証しや冬ごもり
今さらに泣きごとこぼし冬夜守る

サンパウロ         岡野  隆

桜の花風に舞ひ散り花吹雪
恋人の日我が青春をなつかしむ
椿の花水につかりて赤く咲く
さるすべり久見ぬ庭に咲き乱れ
蘭の花散り忘れたよに咲き続き

サンパウロ         佐古田町子

ブロッコリ花大根と春の市
菖蒲ゆでて茹でて酢巻く厨妻
春らしくなって来ましたとご挨拶
まず一杯ビールすすめて春の客
春らしく松葉ぼたんは咲き出でし

サンパウロ         平間 浩二

今年ほど春待つ老いの心かな
一心に春待つ老いの心かな
颯爽と歩いてみたき今朝の空
快眠や今朝も元気に青き踏む
春めくや風やはらかき頬撫づる

マナウス          東  比呂

市をなす舟の肋骨に日脚伸ぶ
アマゾンの日語学び金星祭る
牧の空ウルブ交差をして舞えり
人参も青首ありし硬さかな

マナウス          山口 くに

マニクレの娘に預け日脚伸ぶ
親牛の病む仔にたかるウルブ追う
七夕の八十路の願い健やかと

マナウス          橋本美代子

文字滲む雨にうたれる願の糸
手術医のマスクの声の遠のきぬ
佳き女の鼻水隠すマスクかな
アンデスにケイナの調べコンドル舞う
ウルブーの飛機より高き大旋回
日脚伸ぶおとめ繕う子等のシャツ

マナウス          丸岡すみ子

日脚伸ぶポンタネグラに人の波
七夕や家族で歌い飾り付け
診療台マスクの医師の目の光
気遣いの言葉に感謝マスクの身
長き羽広げてウルブ旋回す
青天にウルブ渦巻く黒き影

マナウス          渋谷  雅

日脚伸び路上のバアにあふる客
毎日のジュースにかかせぬ人参入り

トカンチンス        戸口 久子

日脚伸び庭の花々蜂雀
アマゾンの地球の裏に星祭
減水期砂漠子供毬投す
ブラジルにフェイジョアーダはつきものよ
咳がするマスクをかけて笑顔なし
街歩き旅を楽しめ日脚伸ぶ

トメアスー         鈴木 耕治

蟷螂は鈍い動きで葉の裏へ
美しき桜の映祖国想う
若布汁若くに逝きし祖母偲ぶ
スーパーのオーボデパスコア子等を呼ぶ
パラー栗泰然自若雨季晴れ間

トメアスー         池田アヤ子

蟷螂の構えに泣き幼き子
四季問わず枝豆作りし卆寿翁
老楽のゲートボールや雨季晴れ間
枝豆をつまみ男ども語る
生きがいは枝豆作り卆寿翁

トメアスー         新井 敬子

四月馬鹿騙し騙さる事もなく
復活祭自爆テロまだ治まらず
惜春や二度とない今日大切に
今日こそは干し物乾く雨季晴れ間
雨季晴れ間ゲートボールも賑えり

トメアスー         新井 伯石

雨季晴れ間ノニ干す妻の忙しくて
蟠りいつしか消えし雨季晴れ間
復活祭共感出来る和があれば
パスコアの共感できる和があれば
パスコアの瞑想遥か宇宙まで
終の病永遠に生きよと復活祭

トメアスー         伊藤えい子

静止して餌を待つ蟷螂鎌かくし
四月晴れ病む娘を癒す孫の笑み
無花果や熟れて一日善行
雨季晴れ間問えば応える鉢の花
千年も春を告げきし桜かな

トメアスー         伊藤 民栄

蟷螂や景気対策自分流
理を得たり道路修理や雨季晴れ間
マニフェスト揺らぐ沖縄四月馬鹿
永遠の命を称え復活祭
無花果や不景気知らず実をつける

トメアスー         峰下 牛歩

招かれし総領公邸雨季晴間
蟷螂の我に雄々しく立ち向かう
からからに乾く今年の復活祭
華やいで小鳥鳴き交う復活祭
商魂や天井全て染め卵

トメアスー         南  順子

草の丈背伸びしている子かまきり
無花果を食べし記憶よ父の背で
意味知らず魚求めて聖週間
あれこれとしたい事あり雨季晴れ間
異教徒も十人十色復活祭

トメアスー         三宅 照子

遠のける句会再び復活祭
バス待ちの手話のカップル雨季晴れ間
無花果や弾けて明かす胸の内
蟷螂や適わぬものを威嚇せり
蟷螂や老いて尚燃ゆ闘志かな

トメアスー         高野 信夫

ミニばらや訪ふ人のあり良き日かな
復活祭晴れ間自然を見詰め句を学ぶ
復活祭朝の祈りや堂の鐘

トメアスー         高野 章子

草の花背伸びしている子蟷螂