11月6~17日にボンで開催される国連気候変動枠組条約第23回締約国会議(COP23)を前に、地球温暖化に関連するニュースが報じられているが、ブラジルでは、森林伐採をゼロにした場合の2030年までの国内総生産(GDP)損失額は465億レに至るという研究も発表された。
10月30日、31日付現地紙やサイトによると、2016年の温室効果ガスの濃度は二酸化炭素換算で403・3ppm(2015年は400・00ppm)で、産業改革前(1750年以前)のレベルの145%増となったという。
COP23ではパリ協定の達成方法も協議されるが、195の国や地域が15年12月に結んだパリ協定を完全に遵守しても、気温上昇を産業改革前比2度以内に抑えるという気候変動抑制目標達成に必要な温室効果ガス削減量の3分の1のみとの報道もあった。
地球温暖化が産業、交通などの人的活動の結果である事は世界的な合意事項だが、先進国が年1千億ドルを拠出したりして温室効果ガス排出削減を図っても、2100年までに気温が3度上昇する可能性が強いのだ。
10月31日には、中国の高官が、パリ協定脱退を表明した米国に協定復帰を呼びかける発言を行ったが、ブラジルの取り組みはどうだろうか。
ジウマ政権は森林伐採ゼロは2030年以降の事とし、森林の不法伐採抑制のみを目標とし、テメル政権もそれを踏襲している。これは、パリ協定を批准後も、同協定遵守のための方策は不十分である事を意味する。
この事は、昨年のブラジルの温室効果ガス排出量は前年比8・9%増の22億7800万トンで、世界7位の大気汚染国となったとの報道でも明白だ。
10月30日には、森林伐採をゼロにすれば、30年までのGDP損失額は465億レとの試算も発表された。これは、農牧業用の用地拡大が出来ず、農業を中心としたGDPが減るとの論だ。
しかし、専門家は、森林伐採ゼロ化で温室効果ガス排出量が減り、水資源が保護される事や動植物の生態系保持といった利点や、伐採をしなくても生産性は上げられる事などを度外視していると批判。温室効果ガスの74%を排出する農牧業での改革が遅れれば、パリ協定遵守に要する経費や努力の遅れによる損失はより大きくなると、警告している。