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ブラジル北部マナウス暴動=ブラジル全土で犯罪組織の監視強化へ=脱走200人、遺体39人の身元判明=国際機関から厳しい目も

カルメン・ルシア最高裁長官(左)とアレシャンドレ・モラエス法相(右)(Nelson Jr./SCO/STF)

カルメン・ルシア最高裁長官(左)とアレシャンドレ・モラエス法相(右)(Nelson Jr./SCO/STF)

 【既報関連】アマゾナス州マナウス市で1日夜、麻薬密売組織の勢力争いに端を発する暴動が発生した。暴動は翌日まで続き、アニージオ・ジョビン複合刑務所(Compaj)とプラケクアラ刑務所で計60人の死者が出たほか、アントニオ・トリンダーデ刑務所で82人、Compajで112人の脱走者を出した。同件は国際的にも大きな反響を呼び、国連もブラジルに状況の調査と改善を求めたと、3、4日付現地紙・サイトが報じている。

 マナウス市法医学研究所は3日午後までに、Compajと、プラケクアラ刑務所で死亡した囚人39人の身元を割り出した。身元が判明した39人中、30人は首を切断されていた。残る遺体も皆、少なくとも一部切断または炭化しており、身元確認は手間取りそうだ。4日の報道では、10人分の遺体が引き取り可能で、4人分は既に遺族によって引き取られた。
 アマゾナス州政府は、暴動中に起きた殺戮の標的とされ、事件後も脅迫を受けている州都第一コマンド(PCC・サンパウロ州を拠点とする麻薬密売組織)所属の囚人を隔離するため、使われていなかった刑務所の再開を決めた。
 組織犯罪捜査当局は、この措置は、リオを拠点とする犯罪集団、コマンド・ヴェルメーリョ(CV)とPCCとの抗争を発端とする、アマゾナス州内の刑務所での戦争状態を一時的に終結させるためだけのものとしている。
 双方の犯罪集団の拠点であるサンパウロ州とリオ州では、刑務所に収監中の両組織リーダーへの監視体制が強化された。
 アマゾナス州の諜報当局によると、同州内の囚人の98%(約1万人)は、CVと友好関係にある犯罪集団、ファミリア・ド・ノルテ(FDN)の構成員だ。1日の暴動はFDNが仕掛けたもので、犠牲者はPCC構成員とされていたが、実際には、PCC構成員は半数以下だったとの情報もある。
 麻薬取引の利権を巡るPCCとCVの全国抗争は昨年6月以降、激化しており、10月にはロライマ州とロンドニア州の刑務所で暴動が発生、計18人の死者も出た。
 アレシャンドレ・モラエス法相は3日、ラジオ局のインタビューで「この事件は犯罪集団同士の抗争だけでは説明がつかない。刑務所内に武器が持ち込めるほど、管理体制が腐敗していること、囚人間に従属関係ができていることなど、様々な要因がある」と語った。
 カルメン・ルシア最高裁長官は、4日に法相と国家保安計画について協議、5日はマナウスに飛び、アマゾナス州、パラー州など、北部5州の地裁長官と会合を持つ予定だ。
 事件を受け、国連人権局高官はブラジルに対し、迅速かつ公平な捜査開始を求めるとともに、刑務所内で発生した事は国家の責任とし、今後同様の事件が起きないように対策をとることを要求した。
 フランシスコ法王やアムネスティーインターナショナルは3日、今回の事件を嘆き、収監者達の人権擁護をと訴えた。