私達ブラジルに住む日本人は日常、自分とは姿形の異なったブラジル人に囲まれて生活しています。
それは普段はあまり気にならないのですが、メトロ・電車などに乗ると手持ち無沙汰でもあり、つい周辺の乗客の服装や身体、外形などに目を向けることになります。たまたま若い女性などが近くに来るとついその魅力に惹かれて「健康そうで均整のとれた体型だな、涼しげな目元、頬の膨らみ具合、何とうまく出来てるのだろう」遠慮しながらもついチラリ、鑑賞さして頂くことになります。
もともと較べる方がおかしいのですが、「どうもこれは我々とは違うタネなんじゃないのか、あちらは別の祖先から出てきた別種族でないのか」などとも思い始めます。
学校の先生の教えでは「人間は15万年ほど前にアフリカから出たホモサピエンス(原人)を祖先とする単一の種族だ。欧米人も日本人も皆同じなのだ」と云うのです。
ですが、目の前の現実は『美女と野獣』――。
「じゃあ、どこでどうして、現代このような差が出て来たのだろう?」と考えは広がります。
折はよし、丁度正月休みで時間はある、こういう金にならないことを詮索するのも一興か、と。以下、皆様とご一緒に考えてみたいと思います。
外見上どこが違うか
学者の研究によると、私達人類の始まりというのはおよそ15万年前頃、アフリカの{類人猿}から生まれた「ホモサピエンス」で、全て同一種族だとのことです。それがその後、色々な土地に移り住み、異なった気候の下で長い年月を経る間に、今日見られるような色々な種族が出来上がったのだとのことです。
現在、人類は次の様な大きな3つのカテゴリーに分けられています。
★コーカサイト(白人、西欧系)=ヨーロッパ、北米、北インド
★モンゴロイド(黄色人、アジア系)=中国、日本、蒙古、アジア
★ネグロイド(黒人、アフリカ系)=アフリカ、中米の一部
この世界の三大人種を全部点検に取り上げたのではとても時間も能力も足りませんから、ここでは私達に特に関係の深い西欧人[コーカサス系]と日本人(モンゴロイド系)の間の外見、容姿の違いだけ、に論点を絞って取り上げて見ましょう。
西欧人と日本人の姿形の比較は細かくあげれば沢山ありますが、普段皆様も気付いておられる主な点を表にしてみると以下の様になります。(表1)
違う原因は遺伝にある(?)
親とその子、孫の姿、形についてまず考えられる要素は遺伝です。
3万年から1万数千年まえに日本に渡来してきた日本人の祖先は「縄文人」(先に北方から来た一群)や、「弥生人」(後に主として朝鮮方面から日本に入った別群)などに分けられますが、そのいずれもがモンゴロイド系で、そのころ既に現在の日本人に似た容姿を持っていたと思われます。このことは千年も前に描かれた絵画や彫刻の人物、仏像が現在の日本人と同じ様な顔つきをしていることからも伺われます。
もう一つ、南北アメリカ大陸に昔から住んでいて、ブラジルにも居るインヂオ(INDIAN)の祖先は、獲物を追うなどして1万数千年前にシベリアからアメリカ大陸に渡って来たといわれていますが、現在でも日本人に似た、モンゴロイドの特徴を保持しています。
また、ブラジルに住む日系人の場合も、両親が同じ日系人の場合は三世世代、四世世代になっても全く日本人のような顔つきをしています。ですから、人間の身体的外見は、住む場所が違った程度では変わらず、親、先祖から受け継いで来た血、遺伝子でずっと同じ様な特徴を保つものと思われます。
では、その遺伝の法則に外れて、異なった姿、形の子が生まれてきた原因は何か。一つ考えられるのは種の「突然変異」です。長期間の旱魃や長雨による食料の不足、或いは火山の大爆発による化学・放射性物質の大量吸入などにより、親と違った姿、形の子(モンゴロイド)が生まれてきたケースが考えられます。この子孫が増えたのだというなら、ああ、成る程、納得ですね。
そしてこの様な変異の時期については、この一群がバイカル湖のあたりからユーラシア大陸を東に進み日本列島北部に到達するまでの期間、即ち今から5万年前から3万年前頃であったと推測されます。
蛇足ですが、もし自分の家に親に似ないような可愛い子が生まれたとしても、「やー、いい子が出来た、突然変異か!」などと喜ぶ前に、〃もっと別の理由〃を考えるのが今日では自然ですよね。
環境の違いが外見をも変える(?)
この遺伝原因説に対して、「いや住む土地の気候や食物によって人間(動物)の形は変わっていく。同じアフリカから世界に広がった人類の一方が西欧人となり、他方がモンゴロイドとなったのは長い間、違う環境に住んだためそうなったのだ」という説があります。この環境原因説にもまた色々な説明がありますが、そのうちの幾つかを点検してみましょう。
【身長】動物は寒い地方に住むほど身体が大きくなる。これは猿や犬にも見られるし、人間でも北欧人(平均180CM以上)は南方人(平均165CM位)より背が高くなる。更に、暖かい地方では人間は早く成熟する(少女は12―13歳で一人前になる)ので早く身体の成長も止まる。寒い地方では成人になるまで(女性で15―16歳)年月がかかり、その分身体も大きくなる。
【頭・額】人間は頭脳が発達したのでそれを収納する頭部が大きくなり、額も大きくまた、前方へ出て来た。人間の脳の大きさはは猿の何倍とかと云う。
【アゴ】日本人などは昔から固い木の実、穀物などを噛んで主食として来た。そのためアゴが発達した角顔になった。コーカサス系は肉類を多食したのでアゴが下に尖った。それで細面に見える。
他にもそれぞれの人種系の体つき、鼻や目などの形状について色々な説があるようですが、「ふーん成る程」と云うような説得力のある説がないので、ここでは省略します。しかし、研究熱心な皆様には種々の仮説、お考えがあると思います。「俺の意見はこうだ」と是非面白い自説をご披露願いたいものです。
容姿は変えられるものか(?)
さて、千年とか万年の大昔の世界の話から、一寸現代の日本人の外見に視点を移してみましょう。
最近の日本の若者を見てまず目に付くのはヒョロリと細長く、顔も細面の人、そう、やさ男風が増えたということです。日本の親戚などを見ても、子の背丈が親のそれを超えているのが大部分ではないでしょうか。これを裏付ける面白い資料があります。[表2]
戦後の身長の伸びは目覚しく、半世紀の間で10CM位も高くなっています。これは世界的にも珍しい急速な変化だとのことで、その原因としては食べ物や栄養状態の改善、なかんずく学校給食の普及や発育期(6歳―12歳)の動物性蛋白質の摂取増大が指摘されています。
容貌の変化についてはこれという資料がありませんが、固い食べ物を食べなくなったせいか、アゴが細めになっています。人気歌手の氷川きよしや、演歌の貴公子・山内恵介(写真)が代表的な例でしょう。
ここでもう一つ全く別の方式を調べてみましょう。もう出来上がってしまったご本人には無理ですが、次の世代にまでいくなら、手っ取り早く体型、容姿を変える方法があります。
そう、次世代が自分に無いような条件を備えたパートナーを娶れば良いのです。あなたの息子がコーカサス系の女性を伴侶にすれば父方、母方、双方のDNA、特色を持った子供が生まれます。姿、形は西欧型で日本人的な風合いもある「新しいタイプの日系人」が出来るかも知れないのです。
幸か不幸か、ブラジルに住む日本人は全人口の1%に満たず、99%の「外人」に囲まれて暮らしているのですから、この様な「新日系人」の増える可能性は大いにある訳です。
狭い身内だけの交婚にこだわらず、種々の異なったDNAを持った人達との交婚には「雑種強勢」の原理で、よりすぐれた「あなたの子孫」が誕生する可能性があります。「外人とカーザしてはイカン」などと時代はずれを言わず、新しい事態にも柔軟に対応したいものです。世界をリードするアメリカもロシアも多種族混合国家なのです。
ジャポネース インテリジェンチ
話しが長くなります、この辺で本題に戻りましょう。ここまでいろいろと調べては見ましたが、人種間の姿、形の変化は「遺伝」(突然変異)によるものなのか、あるいは「環境の影響」によるものなのか、はっきりしません。
また、外見が相当に違う西欧系とアジア系に分かれたのは「いつ」「どの時点で」「どこの地点(地域)で」そうなったのか、明快な答はありません。知りたいところですね。
文化、交通手段が発達して、地球全体がひとつになったような今日、これからの人類はどう変わっていくのか。
今の様な西欧系、アジア系の特徴はそのまま続いていくものなのか? それとも全地球規模の混合が進んで、今後ひとつの「地球人」にまとまっていくものなのか?
この方向を知るためにも上に挙げたような疑問への回答が欲しいところです。
ジャポネース・インテリジェンチ、日系社会には多くの博識の方がたが居られます。この様な学術分野でもその実力を発揮、疑問解明して世界に発表願いたいものです。
そこで2017年、トリ年です、大きく羽ばたく年に致したいものです。(hhkomagata@g-mail.com)
※付記=文中の数字には色々と異論もありますので、大体の「めやす」を示したものとご理解願います。
※上記疑問をキチンと解明すれば「ノーベル賞」か「文協学術賞」受賞確実です。GO AHEAD !