昨年12月28日、沖縄系三世の赤嶺エンジ氏(54、洗礼名ジュリオ)がカトリック教会(ローマ法王フランシスコ)からサンパウロ州ソロカバ市の大司教に任命され、ブラジル初の日系大司教となった。正式な就任式は2月25日午前10時から、ソロカバ大聖堂で行われる。
ブラジル国内に約2万人いる司祭(いわゆる神父、Sacerdote)のうちで、「司教」(Bispo)になれるのは300~400人。その上位の「大司教」(Arcebispo)に任命されるのは約40人しかいない。さらにその上は教皇の最高顧問「枢機卿」(Cardeal)となり世界で約120人、教皇選出選挙(コンクラーヴェ)の選挙権を持つようになる。
赤嶺氏は1962年サンパウロ州マリリア司教区のガルサ市生まれ。父の祖父母は沖縄、母は熊本出身。パラナ州クリチバ市のカトリック大学(PUC)で哲学を専攻し、同市の教育機関「スタジアム・テオロジカム」で神学を学んだ。
1979年にライーニャ・ダ・パス神学校で修練し、最初の叙階(聖職者に任命されること)を受けた。87年にサンパウロ州で助祭職、翌年パ州カンベ市で司祭を務めた。また95年、ローマのグレゴリアン大学で神学の修士号、2005年に同大で組織神学の博士号を取得した。
11年、サンパウロ市大司教区が統括する六つの教会管区の一つであるラパ教会の補佐司教に日系人で初めて任命された。
今回の任命を受け、赤嶺氏はサンパウロ市大司教区のオジロ・ペドロ・シェレル枢機卿に対し、5年間の補佐司教勤務中の援助について感謝を述べた。
日伯司牧協会の元会長である松尾繁詞司祭(83、長崎)は日系大司教誕生について、「私達日系人の理解者、また文化等の隔たりの橋渡し役になってもらえるのでは。才能ある日系人が増えており、今後の活躍が楽しみ」と期待した。
聖母婦人会の会長を務める畑中アリッセさん(79、二世)は、憩の園で年に一度行われる慰霊ミサや、サンゴンサーロ教会で長崎原爆犠牲者追悼慰霊ミサを、赤嶺さんが執り行っていたといい、「誰にでも分け隔てなく接してくれるので皆から愛されている。日系人初の大司教ということで、聖母婦人会の皆も喜んでいる。10年後には枢機卿になるのでは」との期待を明かした。
□関連コラム□大耳小耳
聖母婦人会の畑中アリッセ会長によると、憩の園の創立者・渡辺トミ・マルガリーダ女史(通称=ドナ・マルガリーダ)をバチカン法王庁に福者として認めてもらう「列福申請」は、赤嶺ジュリオさんが4年前に発案したそう。憩の園でのミサの後、聖母婦人会のメンバーが「ドナ・マルガリーダは聖人にみたいな人だった」と言ったところ、赤嶺さんは「それなら列福申請を始めたらどうか」と薦めたという。奥原マリオ純さんの働きかけもあり、聖母婦人会が中心になって昨年3月13日、同女史の命日に列福申請に向けた委員会も発足した。畑中さんは「赤嶺大司教も支援すると言われました。時間のかかることですが、地道にやっていきたい」と意気込んだ。