【東京発】パラグァイの独裁政権下の恐怖政治における権力の横暴に抗した体験を寓話的に記した問題作『ギュンターの冬』(ファン・マヌエル・マルコス著、坂本邦雄・原訳、久保恵・監訳、悠光堂、2016年)の出版記念会が11日夜、東京・銀座のレストランで開催された。4年の歳月をへて、パラグァイ日本人移住80周年記念事業として昨年出版された。
著者のマルコス博士は若い頃から多くの文芸・文化活動にたずさわってパラグァイ民主主義運動に加わり、投獄や拷問の憂き目に遭い、長年の国外政治亡命を経験した。ストロエスネル独裁政権崩壊後に帰国し、1991年にアスンシォン市で国内では一番大きい私立ウニノルテ・北方総合大学を創設し総長に就任、今日に至る。
出版の世話をした一人、日本ボリビア協会の杉浦篤(あつし)・専務理事によれば、「当日は初対面の人が多かったにも関わらず、とても和やかな雰囲気のなかでテーブルごとに直ぐに会話が始まりまった」とのこと。
書評を書いた法政大学名誉教授で英文学者の川成洋さんの音頭で乾杯の後、同書の舞台となったアルゼンチン(実際はパラグァイ)とスペイン・イギリス・アメリカとの関係や、現在に至る各国の歴史や社会情勢について解説があった。さらに久保さんからの監訳者としての感想などを含めて約40分ほどの間、全員が耳を傾けた。
チリの赤・白のワインやビールなどで喉を潤した後、食事に入り、アルパの演奏を聴きつつ、参加者全員が各テーブルでの歓談し、あっという間に2時間が過ぎて閉会した。
当日は、ラテンアメリカ文学の第一任者の東京大学準教授・柳原孝敦氏、日本ボリビア協会理事の細野豊氏、伊藤忠OBでアスンシオン駐在経験のある平野潤氏、日本ペルー協会事務局長・奥村邦夫氏、日本チリー協会役員・酒井冨雄氏、日本ボリビア協会事務局・吉田憲司氏、会員・山内純一氏らが出席した。