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「フェミニズムの進歩」か、「芸術への冒涜」か?=服を着たままのリオのカーニバル・キャンペーン

 現在、ブラジルでは、リオのカーニバルのキャンペーンCMをめぐって、ひとつの大きな議論が巻き起こっている。
 8日、最大手テレビ局のグローボ局で、毎年恒例のリオのカーニバルのキャンペーンCMが解禁となったが、その内容に多くの視聴者が驚いた。それは今年のCMではすべての場面で、キャンペーン・ガール「グロベレーザ」が服をまとってサンバを踊ったためだ。
 これは画期的なことだった。それはグローボ局が「グロベレーザ」を起用してキャンペーンを行うようになった1992年以来、グロベレーザは必ず、裸体を色鮮やかなボディ・ペイントで塗っただけで踊ることが常となっていたためだ。
 このCM放送後、ブラジルのツイッターではこの件が話題を独占し、賛成、反対の両意見が飛び交った。
 グローボ側は今回のCMに関し、「世論調査を基に作ったものではないし、女性の体の露出についての道徳に基づいたものでもない」とし、「強いていうなら、『こういうCMの選択肢があっても良いのでは』ということであり、来年も同じ路線で作るかどうかはわからない」とした。
 ただ、グローボ側は、今回のCMが好意的に受け止められたと解釈している。
 今回のCMに対して、好意的に受け止めているのは主にフェミニストたちだ。マーケティング調査員のジャミラ・リベイロ氏は、「今回のCMは黒人女性にとっての大きな進歩」と語る。「これは黒人女性に対する、因習的かつ典型的なイメージを壊すものだ。白人女性にとっては『性の解放』と解釈されるヌードが、黒人女性だと性の欲望の対象のような見られ方になってしまっている」と語る。
 こういう意見はジャミラ氏だけではない。ブラジルの全国広告規制委員会(Conar)も、女性の体の表現についての問題で。毎月のように国民から苦情を受けていると語っている。
 だが、一方で反対意見もある。このCMの元演出家で、グロベレーザを長年(1992~2005)つとめたヴァレーリア・ヴァレンサさんの夫であるハンス・ドーネル氏は「あれは人間の体が芸術に変わる、かけがえのない瞬間なんだ」として、裸を卑猥だの、女性蔑視だのとする意見に一石を投じている。
 ドーネル氏は、このCMに関し、現在も委員的立場にあるが、今年は製作現場に呼ばれていなかったという。
 また、現グロベレーザのエリカ・モウラさんは2015年からこの役をつとめているが、「裸でボディ・ペインティングをして踊ろうが、服を着ていようが、男性の性欲のためにそれをやっているつもりはないの。私はこれまでのグロベレーザを芸術だと思って育って来たし、今でもそれが仕事の目的だから」と語っている。(17日付フォーリャ紙より)