樹海

ブラジルの刑務所内での暴動に見る強者の論理

 年明け早々、ブラジルでは刑務所内での暴動が頻発し、100人以上の死者が出ている。しかも、死者の多くは斬首や焼殺など、目を背けたくなる扱いを受けている▼ブラジルでは、暴動の際、囚人同士の殺し合いや脱獄が起きる事は稀ではない。1~2日に起きたアマゾナス州での暴動では60人が殺され、225人が脱獄。同州では8日にも4人が殺されたし、ロライマ、リオ・グランデ・ド・ノルテ両州の刑務所でも大量殺戮が起きた。一連の報道では、サンパウロ州を拠点とする犯罪組織の州都第一コマンド(PCC)の名前が必ず出てくる▼犯罪組織同士の抗争が原因の殺戮は目新しい事ではない。だが、近年は刑務所に持ち込まれた携帯電話で惨殺する現場や死体などを録画し、ソーシャルネットワークに送りつけられるなど、凄惨さに身がすくむ思いをする機会が増えた▼1~2日のアマゾナス州での暴動ではPCCが被害者だったが、それ以外の殺戮はPCCの報復や見せしめと見られている。斬首などの残虐行為は、自らの力を誇示し、相手を威嚇するためとされるが、巻き込まれる側や刑務所外で気を揉む家族はたまったものではない▼犯罪組織とは無関係だった囚人は殺される直前に家族に送ったメッセージに、不穏な空気が流れており、殺されるかも知れない事や妻や子供を愛している事を書き記した。暴動発生と聞いて現場に急行した家族が、夫や息子の安否さえわからず、悶々とした状態で一夜を明かしたという報道も後を絶たない。対抗者を力でねじ伏せ、我が身を守りたいのはわかる。だが、相手にも家族がいる事を知りつつも惨殺できる精神はわからない。理性を失った時、人はその尊厳を失う。(み)

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