ブラジル地理統計院(IBGE)が16年末に発表した全国家庭サンプル調査によると、2015年の借家の賃貸契約数は、同調査が始まった2004年以来初めて、前年の実績を下回った事がわかった。
2015年に貸し出された賃貸住宅の数は1220万軒で、2014年の1240万軒と比べ、20・04%減少した。
IBGEによると、2004年の賃貸住宅貸し出し数は800万軒で、2014年にはその数が54・6%増えていた。
借家契約で貸し出された住宅数が減ったのは、家を購入した人が増えた可能性も示唆するが、2015年1~9月の新築住宅販売数は前年同期より7%減っており、借家住まいをやめて持ち家に移った人が極端に増えた様子はない。2014年の新築住宅販売数は、2013年より28%減っている。
また、2015年は、住宅購入のための融資申請数が前年比6・4%、融資契約数は同8・32%減少した。
住宅問題の専門家によると、賃貸住宅を利用する人が減ったのは、不景気のために失業したり、所得が減ったりした人が借家契約を破棄したり、更新するのを諦めて、親元に戻ったり、別の人と共同生活を始めたりし始めた事が最大の原因だという。
ブラジルの場合、賃貸契約は最低30カ月という条件もあるため、先行き不透明な状況下で新たな契約を結んだり、契約を更新する事をためらう人が多いというのだ。
建築家のロザナ・ゴウヴェイア・ブランダンさん(30)は、職場に近いアパートで3年間、友人と共同生活していた。だが、建設業界で解雇が進んでいる事を目の当たりにし、2015年5月にアパートを出ると、リオデジャネイロ市西部に住む両親の家に身を寄せた。ブランダンさんは2カ月後に解雇され、年末こそ短期契約の職を見つけたものの、今年はまた失業状態に戻った。
今のブランダンさんには、再びアパートに住むつもりはない。「将来はどうなるかわからないから、少しでも蓄えを増やさなきゃ。手頃な家があれば買う可能性もあるけど、家も高いしね」とブランダンさんは言う。
不況の影響を最も受けているのは若者だ。失業率が2012年以降で最高だった2016年の場合、第3四半期の平均失業率は11・8%だったのに対し、18~24歳の失業率は25・7%。20~29歳の青年の平均所得は、ここ12カ月間で16%減っている。
サンタ・カタリーナ州フロリアノポリス市に住んでいた哲学教師のマリリア・ムレルさん(28)も、8年間住んでいたアパートを引き払い、サンタクルス・ド・スル市の実家に戻った。ムレルさんも知人との共同生活だったが、家賃などの住居費が月々の予算の4割を占め始めた上、失業したため、実家に帰る事を決意した。
「また、借家に住む気はあるか」と訊かれたムレルさんは、「仕事の都合で引っ越さなければならなくなれば仕方ないけど、今のところは考えていないわ」と答えた。(19日付G1サイトより)