ブラジル財務省は26日、国立社会保険院(INSS)の16年の社会補償費は1497億レアルの赤字だったと発表したと26日付現地サイトが報じた。ほぼ1500億レアルにのぼるこの赤字額は、国内総生産(GDP)の2・4%にあたる。
16年の赤字額は、15年に記録した858億レアルより74・5%も膨らんだ。15年の赤字は、GDPの1・5%相当だった。また、14年は567億レアルの赤字で、GDPの1%だった。
財務省のマルセロ・カエタノ社会保障局長は、社会保障費の赤字が急速に拡大した要因として、高齢化による支給総額の増加や、不況やそれに伴う失業者増加によって国民の納付額が減少していることなどを挙げた。
ブラジル連邦政府は、17年の社会保障費は、歳入3811億レアル、歳出5624億レアルで、1813億レアルの赤字になると試算している。赤字補償は予算にも組み込まれ、議会の承認を受けている。
財務省は、16年の赤字1497億レアルの内、1034億レアルは農業年金が占めていると発表した。都市労働者年金は463億レアルの赤字だ。
都市労働者年金の収支が赤字に転落するのは2008年以来の事で、不況による失業者増加、納付額減少という現実を如実に示している。同局長は、今後は都市労働者年金も赤字がかさみ、社会保障費全体を脅かすようになると見ている。
個人零細企業家や非営利団体、農作物輸出、低所得者層に対する社会保障費の納付免除や減額の総額は434億レアルに上った。納付免除などがなければ、赤字額は1063億レアルだった。
ミシェル・テメル大統領(民主運動党・PMDB)は、年金制度改革は国家財政健全化の柱の一つで、昨年末に成立した歳出上限法や、昨年末に提出した労働法改革と並ぶ優先課題としている。昨年12月初旬に発表された改革案には、年金の支給開始年齢を男女共に65歳とする事などが盛り込まれている。
カエタノ局長は、年金制度改革の目的は、社会保障の赤字額をゼロにすることではなく、歳出額をGDPの8%以内に収める事だと説明した。政府の試算では、年金制度改革を行わなければ、2060年の社会保障費の歳出額はGDPの18%に達するという。
カエタノ局長は26日、年金制度改革案は今年9月までに議会で承認されるとの期待を表明した。財務省はこれまで、今年上半期に承認されると予想していた。