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ブラジル外務省=「メキシコの壁」に強い懸念=現政権や民主社会党の位置示す=労働者党への嫌悪感で右傾の兆しある中

 アメリカのドナルド・トランプ大統領が「メキシコとの間に壁を造る」と明言したことを受け、ブラジル外務省は26日、強い懸念を示す声明を発表した。これは、今後の両国の関係やブラジルの今後の政局運営、国のあり方を考える上で重要な見解だ。
 メキシコからの不法移民対策として国境に壁を造ることはトランプ大統領の公約のひとつで、これをブラジルがどう見るかは注目されていた。
 それはブラジル国内で、ジウマ前大統領の罷免やルーラ元大統領をはじめとした労働者党(PT)員のラヴァ・ジャット作戦関与などにより、左翼に対する嫌悪ムードが高まってもいたためだ。
 そのことは、大統領選のアンケートで、女性やLGBT蔑視発言などの極右路線で知られるジャイール・ボルソナロ下議(キリスト教社会党・PSC)の支持率が、それまでの泡沫候補状態から約7%にあがってきたことや、「サンパウロ州にネオナチ集団が形成されている」とBBCブラジルが報道したことでも明らかだ。マニフェスタソン(抗議行動)では、「軍事政権復古」を叫ぶ団体の姿も確認されてきている。
 それに加えて、テメル政権に経済復興を託す人の中には「アメリカとの関係強化」を期待する声も強い。ジウマ政権時代は、アメリカのスパイ疑惑もあって、オバマ政権との関係が悪化していた。
 だが、ジョゼ・セーラ外相(民主社会党・PSDB)を筆頭とする外務省が「メキシコの壁」に反対したことは、ブラジル現政権のひとつの方向性を示したこととなる。
 セーラ氏が所属するPSDBはかねてから、富裕層の支持の厚い政党としてPTと敵対し、16年の全国市長選で圧勝した。企業家のジョアン・ドリア氏がサンパウロ市市長選で圧勝してトランプ氏と比較されるなど、同党は「保守」の見方も強い。だが、ブラジルの88年憲法で保障された民主主義や、建国以来続いている、移民に寛容な国民性を侵すような路線には行かないことが暗に示された形となった。
 同党の重鎮として知られるカルドーゾ元大統領は「18年の大統領選にトランプ氏のようなデマゴーグ戦術の候補が現れることを危惧している」とも語っている。
 18年大統領選では、少なくともPT、PSDBといった二大政党や、テメル大統領の後継者から極右路線候補が出るようなことはなさそうだが、ラヴァ・ジャットでの不信感も残る現政権への国民の不信感が募れば、極右候補躍進の可能性も否定は出来ない。