ブラジル連邦政府が03年に導入した生活扶助「ボウサ・ファミリア」は、貧困世帯を助け、地域社会にも経済効果をもたらす一方、小規模な市を財政危機に陥れていると5日付エスタード紙が報じた。
08年~16年11月を見ると、生活扶助支給総額は108億レが260億レに、140%増えた。一方、人口比に応じて各市に支給される市参加基金(FPM)の支給額は423億レが648億レへと、53%しか増えていない。FPMに占める生活扶助の割合は、08年25・8%、11年32・5%、16年40・2%と拡大中だ。
自治体の中には、セアラー州イコー市やバイア州リアション・ダス・ネヴェス市など、貧困家庭への生活扶助がFPMを上回っている市もあり、その数は7市から187市に増えている。生活扶助がFPMを上回った市は、マラニョン49、パラー38、アマゾナス19など、北東部や北部の小さな市が多い。187市への生活扶助支給額は49億レに及んでいる。
生活扶助は、貧困家庭の購買力を高め、地域の経済活動を促進する効果があるが、その一方、対象家庭の登録作業や収入調査その他で市役所の経費は増える。また、生活扶助対象家庭が買い物などを行う場所が、減免税の対象となる小規模店や正式な所得申告をしないモグリの店などだと、市の税収減も招きうる。
小さな市は税収もFPMも少ないため、貧困家庭への生活扶助支給による恩恵よりも、種々の経費増大や税収減といった事による財政圧迫が起こりかねない。
その一例は、人口6万5千人で、先日、財政上の非常事態を宣言したセアラー州イコー市だ。同市では、前市政の時から既に、3カ月に及ぶ清掃業者への滞納、保健所や病院の窓口閉鎖や医薬品不足などに直面。新市政では人件費も払えない状況にある上、経済活動の中心の農業も、干ばつで深刻な状況にある。
教育や保健などの基本サービスまで滞るのは、市財政がFPM頼みの上、生活扶助がFPMを上回る市共通の悩みだ。生活扶助が不景気に伴う経済活動停滞の影響が急激に出るのを和らげる一方、小さな自治体の財政を深刻化させかねない事が明らかになった。
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