いよいよ目前に迫った移民110周年―。昨年11月に薨去された三笠宮殿下が移民50周年を祝し、皇室として初めてブラジルの地を踏まれ、サンパウロ州奥地を御訪問されたのを最後に半世紀の歳月が流れた。そんななか、移民の故郷とも言えるノロエステやパウリスタ沿線から、皇室の方をお迎えしたいとの切なる声が上がっている。なかでも特に期待が高まるプロミッソン、マリリアの2都市を訪ね、110周年に向け動き出す現地の日系社会の『今』を取材した。
「上塚第一植民地(イタコロミー植民地)の功績を語り継ぐためにも、立派に式典を敢行し、三世、四世を中心に全日系社会が力を合わせていかなければ」――。1月25日、プロミッソン市庁舎の一室に、ノロエステ連合日伯文化協会の安永信一会長(69、三世)の呼びかけで、同地日系団体の代表者が集まり、そんな「覚悟」があちこちからもれた。
終戦直後の勝ち負け抗争にくわえ、上塚周平が住んでいた地所の売却問題が複雑に絡みあい、長年に渡って地元コロニアが二分し、いがみ合う関係が続いてきた。
そのもつれによって「日伯文化体育協会」と「日系文化運動連盟」に分かれ、現在に至るまで並存してきた。
2008年の移民百周年では双方が力を合わせて合同の実行委員会を立ち上げた。だが団体自体は別々に歩みを続け、統一には至らなかった。
だが、今回は違う。来年は上塚植民地の入植100周年を迎える。それを記念して、皇室をお迎えして式典が開催できなかという想いが高まってきている。
同協会の岡地建宣会長(77、三世)は、「世代は移り変り、会員の7割近くが両団体に所属している」と現状を説明し、「一部の年長者の意見を気にしていては、いつまでたっても一緒にはならない。戦後は終わりにしなければ」と胸中を口にした。
同連盟の吉田正広会長(44、三世)も、「プロミッソンの名において一つに団結して式典を行うことが重要だ」と語り、「二つの団体が別々に存在する意義はない。これを機に一つの組織にできれば」と翌年を目標に統合する方向で意見を一致させた。
入植100周年を機に、ようやく終わるコロニアの「戦後」――。戦後70年余りも反目し合っていた二団体が、皇室をお迎えできるかもしれない祝典に向け、ついに統合に歩みだした。(つづく、大澤航平記者)