ブラジルのベンジャミン・スタインブルック氏を主要株主とするナシオナル製鉄(CSN)が、中国最大のインフラ整備公社である中交交通建設(CCCC)と、ブラジル北東部の貨物鉄道の建設・運営を担当するトランスノルデスチーナ・ロジスチカ株式会社(TLSA)の持ち株の一部または全ての売却に関する交渉を始めたと、16日付現地紙が報じた。
両者の交渉は端緒についたばかりだが、これにより、同鉄道の建設事業継続のために、CSN除外も含めた代替手段を探していたブラジル連邦政府内の議論が再燃している。
TLSAはCSNと鉄道建設公社(Valec)の共同経営で、北東部のセアラー州からピアウイ州を通りペルナンブッコ州まで全長1728キロを鉄道で結ぶ、トランスノルデスチーナ計画を担当している。同計画は、ペルナンブッコ州などで鉄道事業を行っていたが、1997年に競売にかけられた北東鉄道網に代わって創設された北東鉄道会(CFN)が管轄する鉄道網に新線を加えるため、2002年に立ち上げられた。
同計画の施行開始は2006年で、CFNは2008年にTLSAと改名した。北東部貨物鉄道は13年に開業の予定だったが、16年現在で60億レアル(2100億円相当)を費やしながら、未だに達成率は52%だ。
ValecとCSNの関係は良好とは言えず、今年1月には、連邦会計検査院(TCU)が「工事進行を脅かす、不正な点の数々が解消されるまで、同計画への公金投入を止める」事を決めた。TCUが指摘する問題点の一つは、公社と民間企業が共同出資するTLSAのあり方だ。CSNは昨年第3四半期現在で234億レアル(8190億円相当)の負債を抱えており、企業戦略の主軸ではない事業の株式売却を試みているが、思うように進んでいない。
マウリシオ・キンテラ交通港湾民間航空相は15日、セアラー、ペルナンブッコ、ピアウイの各州知事やValec総裁代行と共に同件報告官のワウトン・ロドリゲスTCU判事を訪れ、トランスノルデスチーノ計画再開に向けて対談した。
これに対し、CCCC代表者はブラジリアを訪れ、トランスノルデスチーナ計画などのインフラ設備計画への興味を示した。同社は数カ月前からスタインブルック氏と交渉中だが、現時点ではTLSAへの経営参加のあり方などが明確ではなく、政府側の強い関心をひきつけるには至らなかったようだ。