「日本の部活のような熱心さ。ここで演奏できて嬉しい」と目を輝かせて語るのは、サンパウロ日本人学校で教師を務める井上知代さん(37、福井)と夫の寛信さん(36、東京)。サンパウロ市の有力サンバチーム「アギア・デ・オウロ」(以下アギア)の打楽器隊を目指し、過酷な練習を乗り越えて見事入隊した。
駐在3年目だった昨年4月、アギアの打楽器隊予備軍の練習に通い始めた。実技試験3回目で寛信さんは8月に、知代さんは4回目の10月に打楽器隊へ合格した。4回目の実技試験が発表された後、「合格するために仕事後に毎日2時間、チームの練習日には5時間も練習した」との努力を重ねた。
井上夫妻が担当する楽器「ショカーリョ」は、金属製のソロバンのような外見。小さなシンバルが55枚付いており、斜めに傾けて、前に振って鳴らす。
知代さんは「約1キロの重さがあるので練習後は毎回筋肉痛。指が痛くて、授業中にチョークを持てなかったことも」と笑いながら振り返る。事実、彼女の両手中指には痛々しそうに絆創膏がぐるぐると巻かれていた。
3月に帰国する井上夫妻は「これが最後のカーニバル」と真剣な様子をみせる。知代さんは「4月からの集大成。日本人の私を受け入れてくれたチームに感謝の気持ちしかない。気合を入れて優勝を目指したい」と気合を入れている。
同じくチームへ感謝の意を述べた寛信さんは「自分たちの熱意を理解してもらえて嬉しい。本番は楽しく演奏したい」と微笑んだ。
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カーニバル本番を直前にして、各チームが3回ずつ行うエンサイオ・テクニコ(サンバ会場での予行練習)もお終いだ。あとは本番を残すのみ。練習時に、アギアは小型のドローン(無線飛行機)を打楽器隊の上に飛ばして録音したとか。ドローンのおかげで、今までとは全く違った視点からパレードが眺められるようになったよう。カーニバルは「伝統行事」ではあるが、常に新しいものを取り入れ、宗教や人種偏見のタブーに果敢に挑戦してきた特異な歴史を持つ。今回のカーニバルでも、何かポレミコなことがきっと起こるに違いない。あとは当日に雨が降らないことを祈るのみ?!