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移民110周年に向け発進!=皇室ご訪問に高まる期待=(7)=東京五輪視野に日本式野球

 全伯最強と目されるマリリア文化体育協会の野球チームには、JICAボランティアから、史上初という元プロ野球選手の指導員が派遣されている。元中日ドラゴンズ所属の與浦幸二さん(46、岩手県)だ。
 東日本大震災で出身地である岩手県釜石市が大津波で甚大な被害を受けたことをきっかけに、子供達の笑顔という「宝物」を広げるために、大好きな野球を通じて何かできないかとたどり着いたのが、JICAシニアボランティアだった。
 昨年6月に派遣された與浦さんは、現在、指導員育成や選手の指導にあたる。これまでの知識と経験を活かし、特に怪我をしないための練習方法を定着させたいといい、「他の地区へも広めていき、全伯の底上げを図りたい」と期待を語る。
 在籍する200人の選手のうち、約6割は非日系。「日系と非日系によって、要望が異なるのも指導が難しいところ」と苦労を語る。
 華奢な日系人は日本式野球を、体格の良い非日系人はメジャーリーグ式のパワー野球に憧れる。
 そんななか、選手の素質に応じたきめ細やかな指導を行えるのも、プロ野球経験のある與浦さんならではだ。だが、「ベースボール」と「野球」とは一線を画すと強調する。
 「ベースボールが個人の集合体であるのに対し、野球は集合体が優先される。連帯、礼儀、仲間意識は大事な価値観だ」として、野球を通じて人間として立派に成長して欲しいとの思いを持っているようだ。
 当地の野球熱の秘訣を聞くと、「他にはない取組みがある」と言い、同会では無料送迎バスの運行や道具の貸出、遠征費用の無償提供や補助まで行っているという。「大人の目があるため、親も安心して預けてくれ、貧困層の子供達の犯罪抑止にも繋がる」と語る。
 「ただ単に野球を教えるだけではない、模範となるシステムだ」と称賛し、「もっと発信していけば、ブラジルでもスタンダード(標準)になる。必要なことを発信することも自分の役目」と使命を語る。
 「東京五輪出場を目指す子供達の可能性を少しでもお手伝いできれば」―。皇室ご訪問は、そのような子供達が第二の祖国である日本への思いを強め、東京五輪への夢を後押しする機会にもなる。
 與浦さんは、20年東京五輪を見据え、期待を膨らませている。(つづく、大澤航平記者)