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移民110周年に向け発進!=皇室ご訪問に高まる期待=(9)=日高「這ってでも行く」

皇太子殿下の御前で直立不動の日高さん(右)(ブラジル日本移民資料館提供)

皇太子殿下の御前で直立不動の日高さん(右)(ブラジル日本移民資料館提供)

 出所後、日高さんは、隣町ポンペイアで9年間を過ごした。「父親が自転車屋をやっていたのがきっかけ。がむしゃらになって働いた」と懐かしむ。そんななか、三笠宮同妃両殿下がマリリアを訪れたのを知ったのは、だいぶ後のことだった。
 その後、マリリアへ移転し、はやり自転車屋を開業。現在は4店舗まで増え、次男と三男が経営を引継いでいる。今も店舗の一つで、昼の間は毎日店番をする。「まさか一生の仕事になるとは思ってもいなかった」と日高さんはくすりと笑う。
 日高さんが皇族を初めて間近に見たのは、移民百周年で皇太子殿下をお迎えした時だったという。「サンパウロ市文協まで駆けつけた。招待客でもないのに、『どうぞ入って下さい』と言われ、インプレンサ(報道関係者)や特別招待客のプラッカをかけられて。あれよあれよという間に入れてもらった。本当に有難かった」と懐かしむ。
 「間近でお目にかかれ、口では言い表せない」としみじみ。来年の移民110周年については、「この歳ではサンパウロ市まで行くのはもう難しい。でも、マリリアまで皇室の方がきて頂けるなら、這ってでも行きます」と力強く応じた。
 気分が優れないときには教育勅語を読むとスッとするという日高さん。「教育勅語があれば宗教はいらんのだ」と父親から言われて育ったといい、その教えを今でも大切に守っている。
 「時代が変わって可笑しいと思われるかもしれないが、日本人としてブラジルで骨を埋めたい」と語る。「息子たちはここの人間だが、日本の恥になるようなことだけはするな」と育ててきたという。
 マリリアを三笠宮同妃両殿下が訪れて、はや半世紀が過ぎた。日高さんのように日本人としての思いを大切にして生きてきた一世や二世にとって、来年は皇室にお目にかかれる「最後の機会」となるかもしれない。(つづく、大澤航平記者)