去る2016年10月31日に、ブラジルの税制恩赦プログラムであるRERCT特別制度(編註=通称「レパトリアソン法」)を遵守する期間が終了しました。
RERCTは、2014年12月31日までにブラジルに居住していた個人または法人が、保有資産や法的権利に関して国税庁に対する申告漏れや不正確な申告があった場合、代替的な任意の申告を行うことができるものです。
納税者がこの特別制度を申請するには、DERCATを申告する必要があり、関連する税金及びペナルティを2016年10月31日まで支払う必要があります。
また、納税者は、2014年および2015年の原本、または修正済みの所得税申告書、およびブラジル中央銀行の外国保有資産申告書(2016年12月31日まで)を提出する必要があります。
ブラジル政府によると、この特別プログラムに基づく税金および罰金の支払いによる総収入は約510億レアル(ブラジル通貨)であったと公表しています。
現在ブラジルの税務当局は、2016年度の個人所得税申告シーズンを迎えていますが、次の疑問が浮かんできます。
ブラジルの税金恩赦プログラムRERCTを遵守している個人に対するブラジルでの税務義務は今後、どのような影響を及ぼすのか?
まず個人は、配当の分配などの外国資産から得られた収入に適用される規則を認識する必要があります。ブラジルに所在する会社から受取った配当金は課税が免除されるのとは異なり、外国に源泉がある同種類の収入や配当金の受取りは、ブラジルに送金されない場合でも月次で課税されます。
同様に、国外に保有する金融資産から得られる受取利息も月次で課税されます。
税金恩赦プログラムで申告した資産から得られた収入がある場合には、ブラジル法によって定められた期限内に所得税を計算し、納税を行う義務が生じます。もしこの法律に遵守していない場合には、利息及び罰金が科せられます。
さらに、RERCTを遵守している外国資産の所有権を保持している納税者は、ブラジル中央銀行への報告義務があります。10万米ドル以上の外国資産保有者は、2017年4月5日期限の年次申告義務があります。1億米ドル以上の外国資産保有者は、その申告書を四半期ごとに提出する必要があります。
上記に基づいて納税者は、ブラジル中央銀行が決定した期限までに外国保有資産の市場価値を把握し、申告義務の有無を確認する必要があります。
一方、もし納税者が2016年12月31日以前に外国保有資産を売却または償還し、その取引から利益が生じた場合には、所得税の計算を行う必要があります。この場合、その取引から生じた利益がブラジル税法に基づき、為替の変動等を考慮して計算されなければ点に留意する必要があります。
3つ目のポイントは、納税者は2017年3月2日から2017年4月28日までに、ブラジルの個人所得税申告書を提出する必要があります。納税者はDERCATを申告した際に申告した情報を報告する必要があります。
さらに、売却資産または償還に関する詳細を含む、2016年度中に取得した収入および支払った税金を申告する必要があります。
最後に、2016年度ブラジル税恩赦プログラムに遵守しなかった納税者は、ブラジル議会が現在、新制度について法令を審査中であり、ブラジル税務当局への申告について別の機会が与えられる可能性があります。
(問い合わせ:flavia.fernandes@pwc.com, carolina.sakama@pwc.com , nobuyuki.yahagi@pwc.com
※この記事は、ブラジルにおける法令等の改正動向等をお知らせするため発行されたものであり、一般情報の提供を主たる目的としていますので、個別ケースに対する専門的アドバイスとして、ご利用頂けない場合がございますのであらかじめご了承下さい)