町立西小学校(鈴木恒校長)は、柿田川湧水や緑地が近くにあり、のどかな景色に囲まれた児童数480人の中規模校だ。このうち約60人が外国につながる子どもたち。
「つながる」というのは、日本国籍があっても、片親が外国人、両親が日本人でも外国で生まれ育ったケースなども含んでいることを表す。
反対に両親が外国人であっても、日本で生まれ育ち日本語に不自由のない子どももおり、一概に「要日本語支援=外国人」と見なすことはできない。
校内には日本語支援の特別学級「めぐみ教室」と、情緒支援の特別学級「いずみ教室」が設置され、そこには担当の教諭がついている。
めぐみ教室に通うのは、初期の日本語指導が特に必要な20人ほど。在籍するクラスの国語の時間に「取り出し指導」が行われる。
各時間2人から6人ほどの児童がマンツーマン、またはグループの形で日本語を学ぶ。
今年度、めぐみ教室を担当している大上佐(おおうえ・たすく)先生は、もともと日本語支援や外国籍児童の教育について専門的な知識や経験があったわけではなかった。初めて同教室の担当になったのは5年前。「外国の子への指導方法は何も知らず、手探り状態でした」と振り返る。
翌年度以降はクラス担任をしていたが、今年度再び同教室担当となり、日本語指導に関する知識を学ぶため、文科省所管の研修センターで、外国人児童生徒に対する日本語指導者養成の研修に参加した。
めぐみ教室に通う児童には、一人ずつカルテのような指導記録がつけられている。学校全体で把握し、中学への引継ぎをスムーズにするために今年度から始めた。
その子の日本語の習得状況はもちろん、来日前の教育、母語での学力、家族の日本語能力や今後の在留予定・希望なども記載され、指導内容や方針が途切れないようにという意識がうかがえる。
指導記録をつけることは研修で紹介されたことだが、大上先生が独自のひな形を作り、クラス担任と共同で児童ひとりひとりに作成した。
「夏休みを使ってめぐみ教室全員の分はなんとか作りましたが、本当は日本語指導が必要な児童全員の分を作りたいです」と話す。
今年度、同小学校には外国籍児童が多いため加配教員が1人配置されている。だが「加配」と言っても教員がその分多く割り振られるだけで、外国籍や日本語指導の専門知識を持った教員が派遣されるわけではない。いずみ学級も同様だ。
どの教員がめぐみ教室・いずみ教室を担当するか、連続して担当するのかは校長の裁量に委ねられる。
時間割はなるべく日本語の習熟度別に組みたいが、在籍するクラス(=原学級)の国語の時間を抜けて「取り出し指導」をするので、都合よく割り振れるわけではない。また、少人数のグループでは子ども同士の相性も授業の進行に影響するという。
さらに、児童ごとに学習の早さが違うため、その都度組み直し、徐々に原学級にいる時間を増やしていく。(つづく、秋山郁美通信員)