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「大臣の半分を軍人に」=軍政礼賛の大統領候補ボルソナロ氏

ボルソナロ氏(Wilson Dias/Agência Brasil)

ボルソナロ氏(Wilson Dias/Agência Brasil)

 1960年代から80年代にかけて21年間も軍事政権下にあったこと、2003年から13年間、左翼の労働者党(PT)政権にあったことから、ブラジルでは長いこと、右翼傾向が見られない国だと思われていた。
 だが、2014年に発覚しはじめたラヴァ・ジャット作戦を筆頭とした一大政治スキャンダルに加え、ジウマ政権が引き起こした3年の長きにわたる社会不況とジウマ氏罷免に伴うPT政権の終焉。あとを引き継いで昇格したテメル大統領の支持率も10%前後と低く、国民の政治不信が長引いている。
 そのタイミングに「左翼政権が腐敗で長引いたのなら右翼でも…」「アメリカでもトランプが大統領になったのだから」として、極右思想になびく国民が増えつつあるのが現状だ。その後押しを受けて浮上しつつあるのが、ジャイール・ボルソナロ下院議員(61・キリスト教社会党・PSC)だ。
 ボルソナロ氏は軍隊出身の政治家で、犯罪に対する強硬発言により、地元リオで高い人気を誇っている。ラヴァ・ジャット作戦での疑惑も今のところは浮上しておらず、同作戦の徹底支持を国民に煽ってもいるため、国民から「正直物」との印象も持たれている。
 だが、その一方で、女性や同性愛者、黒人への蔑視発言や軍政礼賛発言で物議を醸している人物でもある。その例としては、同僚の女性下院議員に「顔が醜いからレイプする価値もない」と2度発言し、最高裁の被告となったし、ジウマ大統領の罷免の際に、軍政時代に拷問で悪名高かったウストラ将軍の名を称えて投票したことで、一時は議員罷免を求める声もあがった。
 また、「発言は有名だが、政治家としてはいまひとつ、何をした人なのかわからない」との声もある。2月の下院議員議長選に出馬した際も、所属政党の下院議員数より少ない4票しか票が入らないなど、政界での扱いは大きくない。
 政党も、かつては議員数で4番手ほどの進歩党(PP)にいたが、その党で大統領候補として後押しする勢いがなかったか、現在は下院で10名前後の小政党のPSCに在籍している。
 ただ、ここ最近は、国民の世論調査では「大統領になってほしい人」で3番手に入るようになり、支持率も11%ほどになったため、これまでは本気で扱ってこなかったマスコミも無視できなくなってきている。
 そこで12日付フォーリャ紙は同氏への単独インタビューを行ったが、同氏はそこで「大統領になったら閣僚の半分を軍人にしたい」と発言した。
 さすがに、女性の大臣登用などには反対とは言えず、軍政を復古させるなどの意向は否定しているものの、警察の取調べにおける拷問などの暴力的行為の復活は歓迎するとの発言を行なっている。「麻薬犯罪などが愛をもってなおらないなら、厳しくいくしかない」というのが持論のようだ。
 かねてから、PTなどの左翼政党からの受けは悪く、保守系の大型政党の民主社会党(PSDB)のカルドーゾ元大統領からも危険人物扱いをされるなど、いざ選挙戦となった際のバッシングが大きくなることは現時点でも予想される。
 だが、PT、PSDB、テメル大統領の民主運動党(PMDB)の政治家らが数多く絡んだラヴァ・ジャット作戦の捜査が泥沼化すれば、ブラジル内でもポピュリズム(大衆迎合主義)が進む可能性は小さくない。