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「第4の曲がり角」をブラジルに当てはめると?

バノンを「MANIPULATOR」(トランプ大統領の操縦者)と呼んだ雑誌『TIME』の表紙

バノンを「MANIPULATOR」(トランプ大統領の操縦者)と呼んだ雑誌『TIME』の表紙

 トランプ大統領の黒幕、スティーブ・バノン氏に注目が集まっている。「国家安全保障の司令塔」といわれる最高機関「アメリカ国家安全保障会議」(NSC)の常任メンバーにもなった。この人物が愛読しているのが、アマチュアの歴史家が書いた本『Fouth Turnings』(第4の曲がり角、97年)だ▼米国は独立戦争以来、約80年間で一回りする4段階サイクルを繰り返す歴史パターンを持っており、現在はそれが「4回り目」(Fouth Turnings)に来ているというもの。バノンは《一回り目》が独立戦争(1775―1783年)の時期から南北戦争(1861―1865年)、《二回り目》が南北戦争から第2次世界大戦(1939―1945年)、《三回り目》が終戦以降から2008年のリーマンショック頃まで、それ以降の現在が《四周り目》と考えている▼各80年の間には、20歳代から40歳代を迎えた世代が社会の中心に居座って、計4つの世代が20年ずつ世の中を動かす。その4世代の特徴を読み解く「世代交代による歴史論」だ。「一つ目の世代が危機(大戦争)に陥ると、二つ目の世代がその対策として新しい社会体制を作り、三つ目の世代はその体制に反旗を翻す役割で、四つ目の世代は過去に危機に陥った教訓を忘れてしまい、同じ様な危機に襲われる傾向があるという。その循環が80年周期で訪れる▼その考え方に基づいた映画『Generation Zero』をつくり、バノン氏は「アメリカでは80年ごとに体制がひっくり返って崩壊するんだ。で、2008年の金融危機から崩壊が始まって、アメリカの現在までの資本主義的な体制は崩壊する」と訴えている▼彼の認識では、今は大戦争に陥る「一つ目の世代」の始まりだ。バノンは戦争相手を二つ考えているらしい。「キリスト教対イスラム教」の対立図式から「IS(イスラム国)をロシアと手を組んで攻撃する」、さらに、戦争相手その2として「米国の覇権を争奪しようと台頭する中国」と論じてきたと報道されている。もしや皮切りは北朝鮮なのか…▼実際、トランプは2月末に6兆円規模の軍事費増額の方針を発表した。これをもって、バノンが「四回り目の始まりを決定づける大戦争を起こそうとしている」と見る向きもある。一般大衆にとって歴史は「起きるもの」だが、強者の発想では「起こすもの」なのか▼本紙にメルマガを転載している地政学者・奥山真司さんは『Fouth Turnin』の翻訳出版を準備中だ。いわく《危機の時代を日本に割り当てて考えてみると、今年2017年から80年前は、1937年で第2次世界大戦真っ只中です。その80年前は、1857年であり、1867年の明治維新まで、まさに幕末の大動乱中です。近年では、(中略)中国、北朝鮮、韓国との関係は戦後最悪。世界情勢からも日本と隣国との関係や日本の産業、経済状況からも現代が危機の時代、なんらかの時代の転換点であるということは、間違いがないようです》と書く▼ふと足元のブラジルを見てみると、2005年に始まったメンサロン事件、2014年からのラヴァ・ジャット作戦以来まさに「大きな節目」だ。80年前に何があったかといえば、1930年のヴァルガス革命、32年の護憲革命、37年の独裁政権開始とまさに節目▼さらにその80年前には何が起きたか?―なんと1850年9月に奴隷貿易が禁止された。ブラジルの場合、戦争もせずに帝国になった「独立」(1822年)ではなく、300年間も続いてきた奴隷貿易が禁止された方が「危機的な出来事」であったという認識は相当に興味深い。それがあったから外国移民導入が始まり、1888年に奴隷解放となり、翌1889年の共和制宣言へと繋がり、今の国家を動かす人材が育った▼通常「第4の曲がり角」の考え方は米国史のパターンであり、他の国に適用されるものではないが、思いのほか歴史的現象を言い当てている部分がありそうだ。(深)