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サンパウロ市公共交通機関=痴漢の被害届が3年間で9倍に=「声を上げて!」と被害者=地下鉄使えず退職した例も

満員の狭い車両の中で、卑劣な行為を働く犯罪者は後を絶たない(Paulo Pinto/Fotos Publicas)

満員の狭い車両の中で、卑劣な行為を働く犯罪者は後を絶たない(Paulo Pinto/Fotos Publicas)

 サンパウロ市の公共交通機関での痴漢行為は年々増加しており、2016年に出された被害届はバス、都電(CPTM)、地下鉄合わせて219件で、毎週4件以上に上ると14日付現地紙が報じた。
 多くは地下鉄と都電で発生しており、その件数は188件だった。バスでの発生件数は31件だった。13年の痴漢行為による被害届は23件で、3年間の間に9・5倍に増えた。
 痴漢被害は、被害者が恥じ入り、届けを出さないケースも多い。219件は正式に被害届が出された数に過ぎず、実際の被害はもっと多い事が推測される。
 被害届の急増は被害そのものの増加よりも、被害届を出す女性が増えたからと現地紙は分析する。
 公共交通機関での犯罪行為が繰り返し報道された後、女性の人権、尊厳を守るグループが反痴漢を呼びかける運動を始めたのを受け、サンパウロ市地下鉄公社は15年8月に、痴漢被害を訴えるように乗客に呼びかけ始めた。保安職員らの写真と共に「あなたは独りじゃない」という文字が書かれたポスターが、多くの駅構内に貼られた。
 勇気を出して声をあげ、地元紙による実名、顔写真つきでの取材に応じたのはシランジア・メンデスさん(29)だ。
 彼女は2年前、地下鉄3号線を使って出勤中に地下鉄車内で背後の男から精液をかけられた。
 「振り返り、自分の脚が汚れていて、男がズボンのジッパーを上げようとしているのを見た途端に、何をされたか分かった。すぐに助けを求めて叫んだ」と振り返る。男はすぐに乗客に捕らえられた。多くの人が次の駅で降り、地下鉄の保安職員が駆けつけるまで付き添ってくれた。
 メンデスさんはこの事件で受けた精神的ショックで地下鉄に乗れなくなり、仕事も辞めた。「あの路線には2度と乗りたくなかった。また同じ犯人に会うのが怖かったし、あの時の怒りがこみ上げてきて我を忘れ、報復してしまうのではないかも怖かった。そのせいで仕事も辞めたが、2年経ってやっと、一人で地下鉄に乗れるようになった」と語っている。
 メンデスさんは更に、地下鉄公社に2万レアル(72万円相当)の損害賠償を求める訴えを起こし、サンパウロ州政府を訴える意志も示している。「何も悪い事をしていないのだから、勇気を出して声を上げなくてはいけない」と語る彼女は、地下鉄の安全性はまだ不充分で、多くの女性が被害を訴えられずにいる事も合わせて指摘した。
 なお、公共交通機関内での女性への性的犯罪は痴漢行為だけではなく、強姦や強姦未遂も年12件前後起きている。