西小学校内の日本語支援の特別教室「めぐみ教室」で子どもたちを後ろから見守り、作業を手伝うのは、10年以上同小でボランティアとして日本語支援をしてきた石川嘉男さん(79)だ。
石川さんは、日本語支援だけでなく、学校行事に招かれたり、家庭科の調理実習に呼ばれたりと、様々なことで学校に顔を出す。日本語支援を受ける児童だけでなく、全体からも親しまれる、頼もしい存在だ。
同町では、2014年度から町内各小中学校とその地域をつなぐ「地域コーディネーター」が配置され、石川さんは同小のコーディネーターを務める。
コーディネーターは、校区の住民から学校長からの推薦で決まり、町の生涯学習課から委託されている。校内の活動で必要なボランティアを探し、紹介することが役割だ。
石川さんは長年同校で日本語の支援などを続けてきたことから是非にと依頼された。参観日の懇談会中の託児、図書室の補助、家庭科の調理実習の補助など、校内ではさまざまなボランティアが活躍している。
石川さんはほかにも、近くの公民館で放課後に日本語を教える活動も10年以上続けている。
「外国人の子の支援には、わたしたちのほうから、手伝いをしたいと申し出た。最初は来ても『今日はテストだからいいです』と帰されるようなこともありましたが、当時の教頭先生に重要さを訴えて、それから先生全員が協力してくれるようになりました」と、地道な努力を振り返る。
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外国籍児童が多いことは、同小学校の特色になっているのだろうか――。静岡県内の小中学校では、年度ごとに、各小中学校が教育理念や果たすべき役割を描いた経営全体構想や特色を、わかりやすくまとめた「グランドデザイン」が作られ、ホームページなどでも公開されている。
同小のグランドデザインにある経営戦略の一つには、「継続性ある特別支援教育の実現」が掲げられ、「多様な個性が受容される共生を意識した学年、学級経営(ニーズに応じた支援の充実)」と書かれている。
鈴木校長に聞くと、「特にインターナショナルや多文化共生を意識しているわけではありません」と答えた。
とはいえ、「昔から外国人が多い地域なので子どもたちが慣れているんです。例えば遠足のお弁当のときに、外国の子は日本の子とはちょっと違うお弁当を持ってくる。だからって、からかったりする子がいない。違うのが普通という共生する風土があります」と続ける。
さらに「4月の時点の転入生は全員外国籍だったんです。彼らが来てくれたおかげで、クラスが増えて先生の数が減らなかった。だから外国からの転入生はありがたいというのはありますね」と笑顔で話す。
気張らない言葉の中にも学校全体をしっかり見渡して運営する堅実さを感じる。(つづく、秋山郁美通信員)