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《ブラジル》ラヴァ・ジャットで試される常識と良識

 ブラジル連邦検察庁のジャノー長官が、オデブレヒト社の報奨付供述を基にラヴァ・ジャット作戦(LJ)で嫌疑がかかる政治家や企業家への捜査開始要請を最高裁に提出した▼検察庁がLJ絡みでまとまった数の政治家の捜査要請を行うのは2度目だ。最初は2年前にペトロブラスの理事達の報奨付供述を基に行われ、47人を対象とする要請を出した。今回は最高裁で扱うべき人物だけで83件、計320件の要請が出され、約170人が対象となる▼疑惑閣僚の中には「供述で名前が出た」=「有罪」ではないと言う人もいる。議会では「汚職防止法の裁可前に犯した選挙時の隠し口座は免罪とする」とか、「1年経ても結論が出ない捜査の対象者は罪に問われない」という法案も検討中だ▼贈収賄や隠し口座は犯罪と認識しない、あるいは閣僚や議員だから罪は免れうると考える政治家の常識は良識ではない。クーニャ元下院議長と共に起訴された元下議で、昨年までリオ州リオ・ボニート市長だった女性を、州の女性と高齢者対策局長に指名したペゾン知事は、周囲からの圧力で同局長の指名を取り消した。これは、良識を持つ人達の声がそれを欠く判断を覆した例だ▼最近は政界外でも、愛人の殺害を命じて有罪となったサッカー選手が釈放され、全国リーグ2部のチームと契約を結ぶという良識を疑う判断があった。インターネット上では同選手との契約拒否を要請する声も強く、チームの財源の半分以上を占めていたスポンサー達は支援を取り消した。14年大統領選の不正疑惑を扱う選挙高裁は、政局安定のためにテメル氏を温存する意向とか。常識と良識の葛藤は、日常の出来事から政界、司法界までを覆う問題だ。(み)