テメル大統領(民主運動党・PMDB)は21日、政府が進める年金制度改革に地方公務員を含めないことを決めたと、22日付現地紙が報じた。
年金制度改革案は当初から、軍人、消防士、軍警を含んでおらず、「国民全てが負担を分かち合う」の建前がまた崩れたことになる。
ブラジル全土5500余の市の内、約3500市は国立社会保険院(INSS)の年金システムを採用しており、残りの約2千市は独自の年金システムを採用している。
後者の2千市と、26州と連邦直轄区の職員が、政府の進める年金制度改革の対象から外れ、3500市の職員は年金改革の影響を受けることとなる。
同大統領は方針転換の理由を、ここ数日の上下両院有力者との会合で、連邦制(地方自治)の原則を守らなくてはいけないと強く思うにいたったと説明した。
ロドリゴ・マイア下院議長(DEM・民主党)は、「下院議員たちにかかる年金制度改革阻止のプレッシャーは、7割方軽減される」と語り、下院承認が容易になったとの見方を示した。
年金制度改革特別委員会委員長のカルロス・マルン下議(PMDB)も、変更は連立与党議員の働きかけに応じたものだとした。
経済分析員のラウル・ヴェローゾ氏は、「州や市の公務員も年金制度改革の対象に含めないと、地方自治体の財政改革が滞り、連邦政府の財政改革の妨げになる」と批判した。
年金制度改革は国家財政健全化を目指すために不可欠の方策で、年金を含む社会保障費は、国、州、市を問わず、赤字状態だ。国家公務員関連の社会保障費赤字額は国内総生産(GDP)の1・8%で、地方公務員のそれも1・2%に及ぶ。
今年の基礎的財政収支の政府目標は1390億レ以内の赤字に収める事で、目標達成のため、連邦政府は400億レ規模の予算カットを発表する見込みだが、財務省経済政策スタッフによると、カット額は増税が行われるか否かによって決まるという。
インフレ縮小、2月の雇用統計のプラス転換など、景気回復の兆しが出てきたところでの増税は、政府にとってもできるだけ避けたい手段だ。
エンリケ・メイレレス財相は21日、増税への言及を避けつつ、「不況脱出で税収増が見込まれる部分はあるが、甘い見通しに基づいて予算を立てれば、当てが外れ、後で大きくカットしなくてはいけなくなる可能性も生じうる」と述べた。