サンパウロ市内の名門サッカー・チーム、コリンチャンスとパルメイラスは、ファン同士もライバル意識が強い。それは自分たちのチームとは直接関係ない、代表チーム(セレソン)のことに関しても同じだ。
現在のセレソンは、昨年6月までコリンチャンスを率いていたチッチ氏が監督となっている。就任以来、W杯の南米予選で7連勝中と絶好調だ。
ただ、就任以来、チッチ氏は、コリンチャンス時代の教え子(選手)をセレソンに召集することで知られていて、現在もパウリーニョ、レナト・アウグスト、ジル、ファギネルといった選手たちが招集されている。
それをめぐり、「彼らのほとんどは中国リーグでプレーしている。欧州にはもっと召集にふさわしい選手がいるではないか」との批判の声があがり、「クルビズモ(クラブ主義)」と揶揄する声も聞こえてくる。
もっとも気に食わないのは昨年の全国選手権の覇者のパルメイラスで、「なぜわがチームは昨年、圧倒的な強さで優勝したのに、立役者のドゥドゥが招集されないのだ」と、不満の声を上げていた。
こうして迎えたのが23日のウルグアイ戦で、現在2位の相手と戦うのだから、「これまでみたいに甘くない。今日こそ客観性を失ったチッチのセレソンは敗れる」と予想した批評家までいた。
だが結果は、「クラブ主義」の批判の矢面に最も立たされているはずのパウリーニョがハットトリックの大活躍で、強敵ウルグアイを4―1で撃沈した。
パウリーニョといえば、13年のコンフェデ杯の活躍を土産にイングランドの名門トッテナムに移籍したものの活躍できず、14年のW杯でも不調。その後は中国リーグの広州恒大に移籍し、落ちぶれたと思われていたが、チッチ体制下のセレソンでは、それまでのボランチから攻撃的な位置にあげたミッドフィールダーとして先発出場を続けていた。
それゆえ「なぜあいつが」の声も一番あがっていた代表選手だったのだが、今回の3発でそうした声は一夜にして消えてしまった。
すると試合後、コリンチアーノ(コリンチャンス・ファン)のネット上の怪気炎は止まらなくなった。「クラブ主義だと? とんでもない。コリンチャンスがセレソンを救っているのだ」「パウリーニョの招集に文句を言っていたのは、どうせ、パルメイレンセ(パルメイラス・ファン)だろ? ドゥドゥなんて急遽代理召集されたけど、試合に出てもいないじゃないか」と、早速、セレソンの圧勝を自分たちの手柄にし、攻撃の矛先をパルメイラスに向けていた。
ファン同士の争いはときおり血生ぐさい悲劇も生んだりもするが、こうした細かいところでのユーモアの利いた言い争いを見ていると、試合以上に楽しいときさえ見受けられる。
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