ベネズエラの最高裁が3月29日、同国議会から立法権を奪い、最高裁が立法府を代行する決定を下したと、3月30、31日付ブラジル国内紙・サイトが報じた。
同国議会は2015年末の選挙で、マドゥーロ大統領に反対する野党議員が多数派を占めるにいたった。大統領寄りの最高裁はこれまでも50回以上にわたって議会の決議を無効にしてきたが、遂に三権分立が崩れ、事実上、マドゥーロ大統領が全てを握る独裁体制となった。
ベネズエラ最高裁は、議会が2016年1月に選挙法違反の疑いがある野党議員3人の就任を宣言した時から、議会は法を無視しているとし、様々な形で議会の決定を無効化してきた。3月28日には議員の不逮捕特権を取り上げて、政府が野党議員を即刻逮捕する許可も出しており、30日には立法権も奪った。
最高裁は3月30日の決定について、「議会が法を無視して立法府としての機能を欠く間、この状態は続く」としており、実質無期限の決定だ。
野党側の民主統一会議(MUD)や米州機構事務局長のルイス・アルマグロ氏は、この決定をマドゥーロ・チャビズモ政権による独裁、クーデターだと非難している。
フリオ・ボルヘス議長は、ジャーナリストたちの前で、「こんなものはゴミだ」と言い放って最高裁の判決文のコピーを破りすて、「マドゥーロはクーデターを行った。最高裁の決定には従わない。マドゥーロが好きなように法律を作り、国家財政を好きなように操り、気に入らない勢力を好きなように迫害できる権限を与えたものだ」と語った。
同議長はさらに「軍が民主主義を守る盾となって欲しい」と強調した。
この決定に対して、ブラジル政府は「明確な憲法違反だ」とし、ベネズエラ最高裁が恣意的に同国議会の立法権を剥奪したことへの懸念を示した。
ブラジル政府は「三権分立の尊重は民主主義にとって不可欠の要素だ。ベネズエラ司法の決定はこの原則に反しており、同国政治の過激化を促進する。今日のベネズエラを危機から救い出すことはベネズエラ政府の責任であるとここに強調する」との声明を発表。合わせて、他の南米諸国と協調して同国の状況を注視していくと強調した。
ペルーのクチンスキー大統領は「ベネズエラでの民主主義への破壊行為を非難する。ラテンアメリカは民主的な場所だ」として、同国から大使召還を決めた。
アルゼンチン、コロンビア、メキシコ、チリなどからも首相、外相クラスが次々とベネズエラの状況に懸念を表す声明が出ている。